第77話 運営管理26 物流機能
店舗管理も後半戦に突入しています。これからは実際の店舗というよりもそれに付随する輸配送についてふれることにする。輸配送とは物流のことで、物流の機能から始まり、特に卸売業における物流戦略まで学習します。物流独特の用語も登場します。幹線道路沿いにある物流倉庫などを見るにつけ、学習した内容がよみがえるようになるといいですよね。
ではさっそく。
<物流の機能>
簡単にいうと生産と消費のギャップを埋めることが物流の機能であり、以下のように分類できる。
① 輸配送
② 保管
③ 荷役
④ 包装
⑤ 流通加工
⑥ 在庫管理
⑦ 受発注および物流情報機能
物流サービスの向上を目指そうとするとどうしても物流にかかるコストは増大する。これを物流におけるトレードオフの関係というが、顧客サービスを高めるために物流コストとバランスよく調整する必要がある。
物流サービスを高めようとすれば当然に物流コストは増大する。店頭作業効率を高めようとすれば仕訳作業コストが増大する。在庫量を減らせば機会ロスの発生可能性が高まる。発注コストを低減させると納入ロットが大きくなり在庫費用が増えてしまう、といったようにトレードオフの関係にある。
<物流ネットワーク>
先述した物流に関するトレードオフを均衡させるためには物流ネットワークを構築することが重要となる。物流チャネルとは生産拠点から小売店までの物理的な商品の流れるルートのことである。
物流拠点配置とは、物流チャネルの各段階ごとの商圏における物流拠点の配置の場所とその数を示したもの。拠点を置くことで配送エリアが広がり、また納品までのリードタイムを縮小させる効果を持つ。一方で各拠点に在庫を置くことで在庫費用が増えてしまう。
<物流戦略>
ここでは卸売業の物流戦略を中心にレビューする。
卸売りとは、最終消費者以外に対して販売する活動であり、それを主とする業務が卸売業である。卸売業には次のような社会的な役割がある。
①取引数量最小化の原理
アメリカ人のホールさんという人が提唱した原理。
卸売業がメーカーと小売業の間に存在することで取引総数が削減され、社会的コストが削減されると説いた。
②集中貯蔵の原理(不確実性プールの原理)
これもホールさんが唱えた原理。
卸売業が中継点で集中的に在庫を保有すると社会的な在庫量が減少するという原理。
次に卸売業の特徴をみてみよう。
卸売業の使命は「顧客(小売業)が発注した商品をできるだけ早く、間違いなく届けること」である。そのためには受注から納品までのリードタイムの短縮やミスのないピッキングの仕組みが求められる。そこで卸売業の物流倉庫(物流センター)内作業について概観する。
1) 入荷
入荷リストをもとに作業員が現品との照合を行う。メーカーからASN(事前出荷明細)を入手し、ITFコードを利用してリアルタイムで入荷処理を行う。
<ASN>
送り先に対して商品を出荷する前に電子データで伝達する事前出荷情報
<ITF>
主にダンボールに印刷される、集合包装用商品コード(標準物流コード)のこと。後述する
2)保管
入荷商品を保管棚に先入先出しとなるように商品を異動させる。倉庫内に商品をどのように格納するかのロケーション管理も重要であり、ルールによって3っ鳥の方法がある。
①固定ロケーション
棚と商品を固定的に対応させる方法。定番商品の割合が多ければ向いているが、スペース効率は悪い
②フリーロケーション
棚と商品の対応にルールを持たせない方法。入庫時に最適と判断できる場所を決め、そこに格納する。これは自動倉庫システムが前提と考えてよい。
③セミ固定ロケーション
固定とフリーの中間的な方法。
3)ピッキング
注文にしたがって、作業者がリストを片手に、商品を棚から取り出し、台車に投入する作業のこと。
ケース商品ではITFコードなどを用いて自動仕分け機でピッキングする。ピース商品ではデジタルピッキングや無線カーとピッキングを用いるケースが多い。
<デジタルピッキング>
棚に信号が取り付けられており、作業者はその信号の点滅指示により必要数をピッキングする仕組み
<無線カードピッキング>
作業者が無線カートの指示媒体にしたがってピッキングすること
なお、ピッキングの方法には次の2つがある。
①トータルピッキング(種まき方式)
総数をピッキングして、後で店単位に振り分ける。
出荷する商品を一度にピッキングして、その後出荷先別に仕分けする方法。少品種多量の注文に適している。
②シングルピッキング(つみ取り方式)
店単位にピッキングする。
顧客となる店舗や注文先別に商品を集品して歩くピッキング方法。多品種少量で注文先が多い場合に適している。作業員が倉庫内を移動して集品するため移動距離が長くなる。
4)流通加工
値札の発行や貼り付けのことで、小売店の発注単位商品に包装する作業も含まれる。人手とコストがかかるのが課題。
5)仕分け
顧客別、店舗別に商品を分類すること。
6)出荷
出荷検品を行い、トラックへ積み込んで出荷。
最後に卸売業の物流センターについて概観する。
<汎用型>
複数企業を相手とし1ヶ所の物流センターでさまざまな業態に対して出荷するタイプ。
<業態対応型>
物流サービス水準が業態によって異なるため、CVSやスーパーなどの特定業態に絞った物流センター。
<企業専用型>
特定企業に対しての専用物流センターのこと。
このへんはあまり重要ではない。
次回は一括物流のハナシにうつる。
続く。