自称週末ファーマーの国家試験受験記

自己啓発の延長なのか、自己実現の手段なのか、はたまた意地の張り合いか。生きているうちに“何か”を成し遂げたいから走り続けているような感じがする

経済学・経済政策【22年度 第5問】

【平成22年度 第5問】
いま、家計、企業、政府から構成される閉鎖経済モデルを考える。ここで各記号は、Y:GDP、C:消費支出、I :民間投資支出、G:政府支出、T:租税収入、、C0:独立消費を意味し、単位は兆円とする。また、 c は限界消費性向とする。

 生産物市場の均衡条件  Y=C+I+G
 消費関数  C=C0+c(Y-T)
       C0=60、c=0.6
 民間投資支出  I =120
 政府支出  G=50
 租税収入  T=50
ここから得られる結果として、最も適切なものの組み合わせを下記の解答群から選べ。

a 均衡GDPは500兆円である。
b 均衡時における消費は330兆円、貯蓄は170兆円である。
c 均衡予算を編成した上で政府支出を5兆円増加させた場合、
 均衡GDPは5兆円増加する。
d 減税を5兆円規模で実施した場合、均衡GDPは12.5兆円増加する。


〔解答群〕
ア a と b   イ a と c   ウ a と d   エ b と c   オ b と d

 

 

 

 

仮定は閉鎖経済モデルとあるので、輸出入は考慮しませんです。
均衡式Y=C+I+G、 I =120、G=50 とあるので、均衡式に代入しておきます。
→ Y=C+120+50 ・・・①
消費関数  C=C0+c(Y-T)、C0=60、c=0.6、T=50 より、これも代入しておきます。
→ C=60+0.6(Y-50) ・・・②
②式を①に代入しましょうか。
→ Y={60+0.6(Y-50)}+120+50 ですね。これを Y について解きますか。
  Y=60+0.6Y-30+120+50
  Y=0.6Y+200
  0.4Y=200
  Y=500
よって、均衡GDPは500兆円で、 a は正しい記述。

ちなみに、①式を②に代入すると、
→ C=60+0.6{(C+120+50)-50}  これを、C について解くと、
  C=60+0.6(C+120)
  C=60+0.6C+72
  0.4C=132
  C=330
これは均衡時における消費。
また、均衡時の貯蓄は、Y=C+S+T より、S=Y-C-T です。よってそれぞれの数値を代入すればよいのでS=500-330-50=120 となり、 b は不適だと分かります。ポイントは、与件にはない、Y=C+S+T が導けるかどうかです。

次に c の検討に入ります。
まず、均衡予算とあります。均衡予算乗数=1 でしたが、この均衡予算乗数が使えるための条件は、閉鎖経済であることと税金は定額税であることが条件でした。問題文中には“定額税”の表記がありませんね。均衡予算乗数を利用するには少しドキドキしちゃいます。もし均衡予算乗数が使えるのなら、政府支出を5兆円増加させれば均衡GDPも5兆円増加します。だから正しい記述になりそうですね。でも少し保留しましょう。

先に d を検討します。
減税を5兆円規模で実施した場合、T=45 になるということです。 a で求めた均衡GDPの T の値が50から45になるということですね。
①式は不変で、Y=C+120+50 ですし、②式が少し変わって、C=60+0.6(Y-45) ・・・③ ですね。
これを Y について解きましょうか。すると、Y=507.5 となり、均衡GDPは7.5兆円増加しますね。ですので、 d の肢は不適であることが確認できました。
したがって、 c が正しいことが分かり、正解は、イ である。

なお、(Y-T)という表記から、このときの租税は定額税であることが分かります。
閉鎖経済を前提にしていますから均衡予算乗数=1が使えるパターンです。

定率税ならば、T=tYといった表記になります。

このテの問題は時間との戦いになりますから、手際よく攻め立てることです。
先の d ではいちいち計算しましたが、租税乗数を利用するともっと時間短縮になりますね。租税乗数は、 -b / 1 - b でしたから、 b =0.6 を代入すればいいからです。そうすっと、-1.5 になりますから、5兆円の減税ですので、-5兆円×(-1.5)=7.5 になります。
もちろん、 c の均衡予算乗数も結果的には「1」でよかったのでソッコーで解答できます。

なお、この選択肢 c の解説はこうなってましたけど、著者には理解できませんでした。

「適切である。Y=C+I+G であり、Cと I が不変でGが5兆円増加すればYも5兆円増加する」

いや、言っていることは分かるけれど、この問題の解説としてはふさわしくないんじゃないの?

乗数を覚えることは大事なことですが、
だからといってすぐに乗数に与件の数値を代入しようとするのはいささか危険です。
次の問題でそれが分かります。