自称週末ファーマーの国家試験受験記

自己啓発の延長なのか、自己実現の手段なのか、はたまた意地の張り合いか。生きているうちに“何か”を成し遂げたいから走り続けているような感じがする

経済学・経済政策【平成20年度 第6問】

【平成20年度 第6問】
下図は、投資の利子弾力性がゼロである場合を想定したIS-LM曲線を描いたものである。この図の説明として最も適切なものはどれか。

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ア GDPの水準は生産物市場の動向とは無関係であり、
  貨幣市場の動向から決定される。
イ 貨幣供給量が増加しても利子率は不変であり、
  投資は一定の水準に維持される。
ウ 貨幣供給の増加は利子率の低下を通じて投資の拡大を引き起こす。
エ 政府支出の増加により利子率の上昇が生じるが、
  クラウディング・アウトは発生しない。
オ 政府支出の増加はGDPの拡大を引き起こすが、
  クラウディング・アウトが生じる分だけGDPの拡大は抑制される。

 

 

 

 

 

ここからIS-LM分析の問題になりますかね。主に財政政策と政府支出を扱います。

ポイントになるのは“投資の利子弾力性がゼロである場合を想定”というところです。
まず、①IS曲線は垂直  ②クラウディング・アウトは発生しない ことに注意しましょう。
では選択肢の検討です。
IS曲線が垂直な場合、いくらLM曲線がシフトしても、言い換えれば利子率が上下しても投資は変わりませんね。だから、貨幣市場の動向からではGDPの水準は決定されないのです。正しくは生産物市場の動向から決定されます。よってアは不適です。
イですが、貨幣供給量が増加するとLM曲線は右シフト(下方シフト)します。すると利子率は下落しますが、投資は増えません。よって不適。
ウです。イと同じように貨幣供給が増加すると、利子率は低下します。ですが、利子弾力性=ゼロですから投資は増えません。ゆえに「投資の拡大」が不適です。
エは、政府支出の増加によってIS曲線が右シフトします。その結果利子率は上昇しますが、利子弾力性=ゼロなのでクラウディング・アウトは発生しません。よって、本肢が正解。
オは、政府支出の増加はGDPが拡大します。IS曲線が右にシフトするからです。利子率は上昇しますが、弾力性=ゼロですので投資は増えも減りもしません。ゆえにクラウディング・アウトは発生しないので「クラウディング・アウトが生じる」とする本肢の記述は不適です。

 

カンタンに整理すればこんなかんじ。

ア:LMがシフトしてもGDPの水準に変化はありません。ですからGDPの水準を決定するのはISのシフトです。
イ:貨幣供給量が増加すると、LM曲線が右シフトします。GDPの水準は変わりませんが、利子率は下落します。投資の利子弾力性がゼロということは利子率が下落しても上昇しても投資は増えも減りもしないということです。ですから利子率は不変、とするところが誤り。
ウ:弾力性ゼロですから、利子率が低下しても投資は増えません。
エ:政府支出増加はIS曲線の右シフト。利子率は上昇。投資の利子弾力性ゼロですからクラウディングアウトは発生しません。
オ:クラウディングアウトは発生しないので不適。