経営法務【平成23年度 第2問】
【平成23年度 第2問】
東京に本社があるX株式会社(以下「X社」という。)は、事業再編の一環として、会社分割の手法を利用して、札幌支店における事業全部を、札幌にある関連会社のY株式会社(以下「Y社」という。)に移転することを検討している。この場合、X社またはY社の債権者であるA社~D社のうち、X社またはY社において、債権者保護手続き(通知・公告)を行う必要がある債権者として最も適切な組み合わせを下記の解答群から選べ。なお、会社法第758条第8号・第760条第7号に掲げる事項についての定めはなく、また、簡易分割にも該当しないものとする。
A社:X社本社の事業に関する債権者で、分割対象の負債にはせず、分割後もX社
で取引及び支払いを行う。
B社:X社札幌支店の事業に関する債権者で、分割対象の負債として、分割時点の
負債をY社が引き継ぎ(X社は支払いの義務を負わない)、分割後はY社だけ
が取引及び支払いを行う。
C社:X社本社及び札幌支店の事業に関する債権者で、札幌支店分の負債について
は、分割対象の負債として、Y社が引き継いで支払うこととしたいが、区別が
はっきりしない部分もあるので、分割時点の負債全額について、X社が支払う
こととし、分割後は、X社、Y社それぞれが自社の分を支払う
D社:Y社の債権者
〔解答群〕
ア A社とB社
イ A社とC社
ウ B社とD社
エ C社とD社
債権者保護手続きですから、札幌支店が吸収分割されることで不利益を受けそうな債権者はどれか、ということでしょうね。
そうすると、札幌支店の債権を持っていたり、取引があったりする取引先が該当しそうです。
A社は、X社本社と取引があり、札幌支店とは取引がなさそうですから除外できそうです。すると、アとイは消去出来ます。
B社は札幌支店の債権をもっています。それに吸収分割後はX社ではなくY社に請求することになりそうです。債務者が代わることになりますね。そうすると債権者保護手続きは必要ですから、ウが正解になりそう。
C社は、札幌支店の債権をもっている取引先のようです。ただし、分割時点の負債の扱いが明確です。だからとりっぱぐれはなさそうです。
D社はY社の債権者で、D社にとっては、札幌支店が吸収分割されることで、Y社の債務が増える要因になると考えられますね。つまり承継によって債権の担保となる会社財産に変更が生じるため、債権者保護手続きが必要だということになります。
以上により、正解は、ウ です。