自称週末ファーマーの国家試験受験記

自己啓発の延長なのか、自己実現の手段なのか、はたまた意地の張り合いか。生きているうちに“何か”を成し遂げたいから走り続けているような感じがする

経営法務【平成26年度 第18問】

【平成26年度 第18問】

会社分割(吸収分割を前提とする)と事業譲渡の相違に関する記述として最も適切なものはどれか。

 

ア 会社分割では吸収分割契約の内容を記録した書面または電磁的記録を本店に

  備え置かなければならないが、事業譲渡ではこのような制度はない。

イ 会社分割では適法に債権者保護手続きを経ることで対象事業の債務を移転さ

  せることが出来るが、事業譲渡では個々の債権者からの同意を得ずに債務を

  移転させることが出来る。

ウ 会社分割では分割会社が取得している許認可は承継することが出来ないが、

  事業譲渡ではそれを承継することが出来る。

エ 会社分割では分割承継資産の対価として承継会社の株式を発行しなければな

  らないが、事業譲渡の対価は金銭に限られる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なんだか会社分割と事業譲渡の違いって何回も問われていますね。狙い目なんでしょうか。あまり意識しなかったけれどな。

確かに会社分割と事業譲渡は似ていることに気づく。事業譲渡は組織化された機能的財産を一体として譲り渡すことであり、会社分割はその事業の権利義務の全部または一部を他の会社に承継させることだ。

事業譲渡は対価に金銭を受け取ることが多いが何も金銭に限定されるわけではないし、営業権が譲渡されるだけで従業員や取引先は当然に譲渡されない。

他方、会社分割は部門ごと会社が替わる。そうすると労働契約承継法の適用があるし、債権者保護手続きも必要になる。

いろいろ細かいところで相違点があるんだろうなと意識しつつ進める。

まずはアだ。

会社分割は契約書面の備え置き義務があるから前段は正しい。事業譲渡は備え置き義務はないし、債権者保護手続きも不要だ。ゆえに後段も正しい。だからアが正解かな。

次はイ。

会社分割は債権者保護手続きが必要なので前段は正しい記述だ。後段は事業譲渡の債権者保護手続きのことを言っているような気がするけれど、債権者保護手続きなど一言も書いていない。個々の債権者からの同意を得ずに債務を移転出来るってあるけど、事業譲渡はある一部門を譲渡するだけで当該部門に係る債務って移転されるの? なんだかあやしい。

次にウだ。

許認可についてだな。常識的に考えよう。会社分割は会社が替わるわけで、許認可はその会社に与えられたものであり、その部門に与えられる訳ではないよな。だから会社分割は許認可も移転する訳ではないと考えられるね。後段は事業譲渡だけど、事業譲渡は部門が譲渡されるんだから当然に許認可は動かないはず。つまり本肢は不適だ。

最後にエ。

会社分割は必ずしも親子関係ができるわけではないからなにも株式である必要はないよね。金銭だって社債だって新株予約権だっていいわけで。事業譲渡は金銭に限られるってあるけど、だいたいは金銭が多いよね。でも「限られる」っておかしくね? だからこれは正解にはしない。

正解はアまたはイなんだろうけど、

肢の内容にまったく文句のないアが正解だろう。

ちなみに、イがなぜ誤りかというと、後段の債務の移転についての記述が間違っている。事業譲渡は売買契約であるため、債務の移転に関しては個別の同意が必要になる。つまり債権債務の主体者が替わる売買契約となるので債権者保護手続きが不要な代わりに個別の同意を得る必要があるわけだ。

以上により、正解は、ア となる。