経営法務【平成17年度 第5問】
【平成17年度 第5問】
会社Xの社長甲は、会社Yが2005年4月に実用新案登録出願して取得した家庭用品aについての実用新案権Aを譲り受け、実用新案権Aに基づいて特許出願を行い特許権を取得し、家庭用品aについて本格的に事業展開することを計画している。この実用新案権Aについては会社Zから実用新案技術評価の請求が行われている。
そこで、会社Xの社長甲は、実用新案権Aを譲り受けて特許出願を取得するのに手続き上どのような問題があるか、あなたにアドバイスを求めた。
次のアドバイスの中で最も適切なものはどれか。
ア 実用新案権Aに基づく会社Xの特許出願は、会社Xへの移転登録の日以後であ
れば、第三者からの実用新案技術評価の請求を受けたとしても当該通知の
あった日から30日を経過するまではいつでもできます。
イ 実用新案権Aに基づく特許出願は、最初に実用新案権Aを取得した者(会社
Y)が実用新案技術評価の請求をしなければ、実用新案権Aの譲渡を受けた者
(会社X)が行うことができません。
ウ 実用新案権Aに基づく特許出願は、最初に実用新案権Aを取得した者(会社
Y)しかすることができません。
エ 実用新案権Aに基づく特許出願は、実用新案権Aについて会社Zからの実用新
案技術評価の請求の有無にかかわらず、実用新案権Aの設定登録の日から3年
以内ならば何の支障もなくいつでもできます。
本問は実用新案権に基づく特許出願を問うています。
原則、実用新案権出願登録から3年以内であれば特許出願できます。特許が認められれば元の実用新案権は放棄しなければならず、再度の実用新案権出願は不可となっていますです。実用新案権に基づく特許出願が認められれば、実用新案権出願の日から20年の存続期間になることにも注意しましょう。
これっていわゆる後の特許出願ですからいろいろと制約があります。
まず、先にも述べたように、実用新案権出願登録から3年以内であることが条件ですね。また、この3年以内でも、第三者による技術評価の請求があった場合には30日以内に特許出願をする必要があります。
さらには、3年以内であっても、当該実用新案権者もしくは出願人が技術評価の請求を行うと特許出願をすることができなくなります。
整理すると、
大枠で出願登録から3年以内なら特許出願できる。
ただし、実用新案技術評価の請求を、
第三者が行った場合 → 30日以内に特許出願必要
自ら行った場合 → 特許出願不可
っつうことであります。
これらを踏まえて選択肢を検討しましょうか。
アです。まず実用新案権の移転には登録が必要ですね。その登録以後なら特許出願はできますが、出願登録から3年以内で、第三者による技術評価の請求から30日以内であるという条件付きですね。アにはおかしいところは見当たりません。
イです。会社Yだろうと会社Xだろうと自ら技術評価の請求を行うと特許出願できなくなります。ゆえに不適。
ウは実用新案権は会社Xにありますからウの肢は不適です。
エは、第三者から技術評価の請求があった場合には30日以内に特許出願する必要があります。なので、「実用新案権Aの設定登録の日から3年以内ならば何の支障もなくいつでもできます」の記述は不適。
以上により、正解は、ア である。