自称週末ファーマーの国家試験受験記

自己啓発の延長なのか、自己実現の手段なのか、はたまた意地の張り合いか。生きているうちに“何か”を成し遂げたいから走り続けているような感じがする

経済学・経済政策【平成26年度 第5問】

【平成26年度 第5問】
 以下の2つの図は、標準的なIS-LM分析の図である。両図において、初期状態がISとLMの交点であるE0として与えられている。政府支出の増加によってISがIS'に変化したとき、以下の両図に関する説明として最も適切なものを下記の解答群から選べ。

f:id:sk6960:20160428095940j:plain

〔解答群〕
ア 図1が示すところによれば、政府支出の増加による総需要刺激効果は、クラウ
  ディング・アウトによって完全に相殺されている。
イ 図1で点Aから点E1までの動きは、「流動性の罠」と呼ばれる状況が生じている
  ことを示している。
ウ 図1で点E0から点Aまでの動きは、政府支出の増加によるクラウディング・アウ
  トの効果を示している。
エ 図2では、政府支出の増加によって利子率が上昇することを示している。
オ 図2では、政府支出の増加によるクラウディング・アウトは発生していない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こういう問題は確実に取りたいですね。素直なIS-LM分析の問題ですし。
与件が「政府支出の増加」とありますから、拡張的財政政策としてハナシを進めます。
そもそもこのIS-LM分析は財市場と貨幣市場を同時に分析するものです。一方で、45度線分析は貨幣市場で決まる利子率と労働市場で決まる物価を一定と仮定して分析しました。
45度線分析では利子率を一定だとしますから、
拡張的財政政策を行うと、IS曲線が右シフトします。利子率は一定ですから、図1でいうところの点Aで均衡します。
他方、IS-LM分析では拡張的財政政策を行うと、IS曲線が右シフトしますね。すると、均衡点は45度線分析と同じように点Aに移ります。貨幣市場も同時に分析しますから、拡張的財政政策で国民所得が増加すると(E0→Aの変化です)、貨幣の取引需要が増加しますから利子率が上昇します。投資は利子率の減少関数ですから利子率の上昇は投資量を減らします。投資が減少すれば総需要は減少しますから国民所得も減少します。これが点Aから点E1への変化です。この変化がクラウディング・アウトです。

図1でおさらいすれば、拡張的財政政策によってIS曲線がシフトします。
45度線分析では、利子率は一定だと仮定しますから、均衡点は点E0→点Aに変化します。
貨幣市場も同時に分析すると、点Aに移ったのだから国民所得が増加し、貨幣の取引需要が増加します。貨幣の取引需要が増加すると市場利子率は上昇します。投資は利子率の減少関数ですから利子率が上昇すると、投資量は減少。ゆえに総需要も減少し、国民所得も減少します。これが点A→点E1への変化です。
点A→点E1への変化はクラウディング・アウトによるものだ、といえます。

なお、図2ですが、LM曲線が横軸に並行です。すなわち流動性の罠の状態です。流動性のわなの状態にあるとき、貨幣の利子弾力性は無限大です。
図にあるように拡張的財政政策を行うと均衡点はE0→E1へ変化します。利子率は不変ですから投資量は増減しません。つまりクラウディング・アウトは発生しないとわかります。
これらを踏まえて選択肢を検討します。

ア:クラウディング・アウトが発生しているのは事実だけれど、完全に相殺するほどのクラウディング・アウトってあるんかいな?
イ:点A→点E1までの動きがクラウディング・アウトです。流動性の罠ではない。
ウ:点E0→点Aの動きは拡張的財政政策における有効需要の拡大の効果を示しています。
エ:LM曲線は水平ですから利子率は上昇しません。
オ:経済が流動性のわなの状態のとき拡張的財政政策を行ってもクラウディング・アウトは生じないです。ゆえに本肢が正しい。
以上により、正解は、オ である。