経営法務【平成26年度 第9問】
【平成26年度 第9問】
商標制度に関する記述として最も適切なものはどれか。
ア 継続して2年間、日本国内において商標権者、専用使用権者または通常使用
権者のいずれもが各指定商品または役務についての登録商標の使用をしてい
ないときは、その指定商品または役務に係る商標登録を取り消すことについ
て審判を請求することができる。
イ 商標権者の不正使用による商標登録の取消の審判の請求は、請求人が利害関
係人でないときは、審判を請求することが出来ない。
ウ 商標登録を取り消すべき旨の審決が確定した時は、商標権は、商標権の設定
の登録の日に消滅したものとみなす。
エ 登録意義申し立てについての審理においては、登録意義の申し立てがされて
いない指定商品または指定役務については、審理することが出来ない。
取消審判とか異議申し立てとか無効審判を総合的に問うていますね。商標権は紛らわしい制度ですからこういうところ、突いてくるんですねぇ。
さて、まず整理すべきは以下の点です。
①取消審判
②登録無効審判
③登録異議申し立て
①の取消審判はさらに3つに分類が出来ます。
1)不使用取消審判
2)不正使用取消審判
3)代理人等による不正登録の取消審判
①の取消審判についてですが、
スピテキに掲載されていたのは1)の不使用取消審判です。もっとも多く見られる事例なのでしょうね。不使用取消審判は継続して3年以上私用されていない登録商標の取消を請求できる制度ですね。誰でも請求が可能です。また取消決定の審判があった場合は審決の日に商標権が消滅します。
2)の不正使用取消審判は請求期間が不正使用を知った日から5年以内と制限があり、これも誰でも請求が可能になっています。取消の審決があった場合、当該商標権は設定の登録の日に消滅したものとされます。ここが違いなんですね。
3)については審決確定後に商標権が消滅するとされています。
また②の登録無効審判は、特許法/実用新案法/意匠法にも定めがあります。特許法同様に商標法では請求できるのは利害関係人のみとし、実用新案法および意匠法については誰でも請求可としているところが相違点です。
③の登録意義申し立てですが、平成26年の改正までは商標法のみに認められていたものでしたが、改正後、特許法も異議申し立てが可能になっています。
商標法により登録異議申し立ては公報発行から2ヶ月以内ならば誰でも請求が可能です。一方、特許法は公報発行から6ヶ月以内なら誰でも請求が可能です。数字の部分が違うので狙われそうですね。
さて、これらを踏まえて選択肢の検討に入ります。
アですが、不使用取消審判は「2年間不使用」ではなく「3年間」ですので誤りですね。
イは、取消審判は「誰でも請求可」ですから、「利害関係人」とする記述が誤りですね。
ウは、取消審判確定の効果ですが、不使用の場合は審決確定後に商標権が消滅します。また、代理人等による不正使用の場合も同様に審決確定後に消滅します。不正使用取消審判の場合は審決が確定すると、設定登録の日に商標権が消滅したものとみなされます。ゆえに誤りです。細かい論点ですよね。
エは、登録異議申し立てでは、登録意義の申し立てがあった指定商品または指定役務の審理が行われます。ですから申し立て対象ではない指定商品または指定役務については審理することが出来ません。
以上により、エ が正解である。