自称週末ファーマーの国家試験受験記

自己啓発の延長なのか、自己実現の手段なのか、はたまた意地の張り合いか。生きているうちに“何か”を成し遂げたいから走り続けているような感じがする

経済学・経済政策【平成21年度 第8問】

【平成21年度 第8問】
次のIS-LM分析に関する文章を読んで、下記の設問に答えよ。

 下図は、生産物市場の均衡を表すIS曲線と、貨幣市場の均衡を表すLM曲線を描いている。

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 まず、生産物市場の均衡条件は、
  Y=C+I+G
で与えられる。ここで、Y:GDP、C:消費支出、I :投資支出、G:政府支出である。
 消費関数は、
  C=C0+c(Y-T0)
であり、、C0:独立消費、c:限界消費性向(0<c<1)、T0:租税収入(定額税)である。
 また、投資関数は、
  I =I0-ir
であり、、I0:独立投資、i :投資の利子感応度、r :利子率である。
 さらに政府支出は与件であり、G=G0とする。
 この結果、IS曲線は、

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として導出される。①この式はIS曲線の傾きや位置を示すものである

次に、貨幣市場の均衡条件は、
 M=L
である。ここで、M:貨幣供給、L:貨幣需要である。
 貨幣需要関数は、
  L=kY-hr
で与えられ、k:貨幣需要の所得感応度、h:貨幣需要の利子感応度である。
 また、貨幣供給は与件であり、M=M0とする。
 これらから、LM曲線が導出され、

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として示される。②この式はLM曲線の傾きや位置を表している

 

(設問1)
文中の下線部①について、IS曲線の特徴に関する説明として、最も適切なものの組み合わせを下記の解答群から選べ。

IS曲線より右側の領域では、生産物市場は超過供給の状態にある。
b  限界貯蓄性向が大きいほど、IS曲線はより緩やかな形状で描かれる。
c  政府支出の拡大と増税が同じ規模で実施された場合、IS曲線の位置は変わ
 らない。
d  投資の利子感応度が小さいほど、IS曲線はより急な形状で描かれる。


〔解答群〕
ア a と b   イ a と c   ウ a と d   
エ b と c   オ c と d 

 

(設問2)
文中の下線部②について、LM曲線の特徴に関する説明として、最も適切なものの組み合わせを下記の解答群から選べ。

a LM曲線より下方の領域では、貨幣市場は超過供給の状態にある。
b 貨幣供給の増加はLM曲線を上方にシフトさせる。
c 貨幣需要の利子感応度が大きいほど、LM曲線はより緩やかな形状で描かれる。
d 貨幣需要の利子感応度がゼロの場合、LM曲線は垂直に描かれ、GDPの水準
 は貨幣市場から決定される。


〔解答群〕
ア a と c   イ a と d   ウ b と c   
エ b と d   オ c と d 

 

 

 

 

実は式がなくても解けるんですが・・・(苦)

一文一文追っかけていると時間切れになってしまう可能性が大ですな。
だからここは選択肢の検討を急ぎましょうか。
まずは設問1からです。
aはIS曲線の右側は超過供給の記述は正しいです。IS曲線の右側は超過供給、左側は超過需要です。下図を参照してくださいね。

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bは限界貯蓄性向とあります。IS曲線の傾きを表す項の分子が 1-c となっていまして、これが限界貯蓄性向を表しているのです。当然に、分子である 1-c が大きいと傾きが急になりますから、「緩やかな形状」とする記述は不適。
cは「政府支出の拡大と増税が同じ規模で実施」とあります。同じ規模で政府支出の拡大と増税が行われても相殺にはなりません。なぜなら、消費関数はC=C0+c(Y-T0) であり、定額税であるT0が増え増税になったとしても、限界消費性向が0<c<1である以上、-cT0 も1未満になるからです。ゆえにIS曲線は右にシフトするので、位置は変わらないとする本肢の記述は不適。
dです。投資の利子感応度は投資の利子弾力性ともいいます。スピテキは後者の言い方をしていました。投資の利子感応度(利子弾力性)が小さいほど、IS曲線は傾きが急になります。ゆえに正しい。
したがって、正解は、ウ である。

 

続いて設問2。
選択肢の検討です。
aは「LM曲線より下方の領域は超過供給」とあります。LM曲線よりも下側(右側)は超過需要、上側(左側)は超過供給ですので、不適。
bです。貨幣供給量が増加すると、LM曲線は右シフトします(下方シフト)。貨幣供給量が増加すると貨幣需要が減少しますから市場利子率は下落します。ゆえにLM曲線は右シフト(下方シフト)しますので本肢は不適。
そうすっと、正解は、オ なんですね。
一応、cとdの選択肢も確認します。
cは貨幣需要の利子感応度が大きいほどLM曲線は緩やかになります。
dは貨幣需要の利子感応度がゼロの場合は、LM曲線は垂直です。利子率が上がっても下がっても投資は増えも減りもしません。だから財市場ではGDPは決まりようがありません。すると、GDPはどうやって決まるかというと貨幣市場で決まることになります。