自称週末ファーマーの国家試験受験記

自己啓発の延長なのか、自己実現の手段なのか、はたまた意地の張り合いか。生きているうちに“何か”を成し遂げたいから走り続けているような感じがする

経済学・経済政策【平成22年度 第8問】

【平成22年度 第8問】
次の開放マクロ経済モデルに関する文章を読んで、下記の設問に答えよ。

 下図は、開放経済下におけるマクロ経済モデルを描いたものである。
いま、小国モデル、完全資本移動、変動為替レート制、物価の硬直性、静学的為替レート予想を仮定する。下図では、これらの前提に基づき、生産物市場の均衡を示すIS曲線、貨幣市場の均衡を示すLM曲線、自国利子率と外国利子率の均等化を示すBP曲線が表されている。

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(設問1)
貨幣供給の増加に伴う効果の説明として、最も適切なものはどれか。

ア 貨幣供給の増加は、LM曲線を右方にシフトさせ、民間投資支出の増加を通
  じて所得を増加させる。
イ 貨幣供給の増加は、LM曲線を右方にシフトさせるが、外貨準備の取り崩し
  とそれに伴う貨幣供給の反転減少を伴い、所得に影響を与えない。
ウ 貨幣供給の増加は、経常収支の改善を通じて所得の拡大を引き起こす。
エ 貨幣供給の増加は、内外金利差に伴う大量の資本の流出を引き起こし、
  円高を生じさせる。

(設問2)
外国利子率低下に伴う効果の説明として、最も適切なものはどれか。

ア 外国利子率の低下は、円安を通じて自国の経常収支を改善させる効果を持つ。
イ 外国利子率の低下は、金融緩和と同じ効果を持ち、LM曲線を右方にシフト
  させ、円安を通じて所得の拡大を引き起こす。
ウ 外国利子率の低下は、金利差に伴う資本の流入を引き起こし、円高を通じて
  IS曲線を左方にシフトさせ、所得の減少をもたらす。
エ 外国利子率の低下は、自国利子率の低下をもたらし、民間投資支出の増加を
  通じて所得の拡大を生じさせる。

 

 

 

 

 

 

今度こそ、マンデル=フレミングモデルですね。
完全資本移動、変動相場制を仮定しています。なお、国際収支イコール経常収支+資本収支、経常収支イコール貿易収支という仮定もあります。
この設問1は貨幣供給を増加させた場合についてを問うています。
つまり完全資本移動、変動相場制下における金融緩和策の効果を問うているのかもしれません。
プロセスを確認します。
中央銀行が金融緩和策を行うと、LM曲線が右シフトします。
すると、自国利子率が下落しますので外界資金が流出します。
ゆえに資本収支は悪化します。
変動相場制ですから、自国通貨が売られ為替市場に自国通貨がたぶつくと減価が生じます。
減価は輸出を増やし、輸入を減らすので貿易収支(経常収支)が改善します。
結果、財市場では生産量が増加するのでGDPは増加します。IS曲線の右シフトです。
結果、完全資本移動、変動相場制下における金融緩和策は有効であると結論付けます。

選択肢を確認しましょう。
アですが、「貨幣供給の増加は、LM曲線を右方にシフト」までは正しいですな。後段が誤りです。所得が増加するのは民間投資支出の増加によるものではなく、輸出の拡大による生産量の増加です。ゆえに不適。
イは、前段は正しいですね。後段の「外貨の取り崩し」が誤りです。外貨を取り崩すと為替市場ではドル(外貨)を売って自国通貨を買い戻すことになり、結果、減価にはなりません。逆に自国通貨安を維持するために外貨(ドル)を増やし、為替市場の自国通貨をたぶつかせます。自国通貨安は輸出の増加を引き起こし、国際収支(経常収支)を改善させますからね。よってイも不適です。
ウは、貨幣供給の増加は経常収支は改善します。ゆえに生産物市場が活況となるため所得が増加するわけです。ゆえにウは正しい記述。
エは、内外金利差に伴う大量の資本流出を引き起こすのは正しい記述ですが、円高にはなりません。自国通貨が買われ為替市場では自国通貨がたぶつくようになりますから円安です。ゆえに不適。
以上により、正解は、ウ である。

設問2は外国利子率の低下による効果を問うています。
結論だけ押さえておいてもダメなんですよ、こういう問われ方があるから。
外国利子率が低下するということは自国の利子率は上昇するということです。
自国利子率の上昇は、海外資金を流入させますので資本収支は改善。為替市場では円高が進み、輸出が減少するので経常収支は悪化します。生産物市場では財の需要が減少しますからIS曲線は左方にシフトし、GDPは増加しません。完全資本移動、変動相場制下での財政政策がこういうプロセスになりますね。
では選択肢を検討しましょう。
アは、外国利子率が低下すると自国利子率は上昇します。その結果円高になるので「円安」の記述が不適です。
イは、「金融緩和と同じ効果」とあるのがダメですね。金融緩和は設問1であったように、LM曲線が右シフトしますから自国利子率の下落、外国利子率の上昇です。ゆえに不適。
ウは、外国利子率の低下は相対的に自国利子率の上昇です。海外資金が流入しますので円高になります。円高は輸出を減らし、財の需要も減少しますからウは正しい記述です。
エは、説明しなくても×だって分かりますよね。
以上により、正解は、ウ である。