経済学・経済政策【平成18年度 第13問】
【平成18年度 第13問】
次の文章を読んで、下記の設問に答えよ。
企業Aと企業Bからなる寡占市場において、それぞれの企業が採りうる4つの戦略
と対応する利得行列が下表で与えられている。表の( )内の数字は、左側が企業Aの利得であり、右側が企業Bの利得である。両企業は協調行動をとらず、互いの相
手企業の戦略を予想しながら自己の利得を最大化する戦略を選ぶとする。ここ
で、混合戦略は採らないとする。
企業B
戦略B1 戦略B2 戦略B3 戦略B4
企 戦略A1 (85,35) (70,25) (20,55) (10,40)
業 戦略A2 (75,45) (40,45) (30,50) (15,30)
A 戦略A3 (80,55) (60,45) (25,45) (20,50)
戦略A4 (60,30) (65,20) (10,70) (40,20)
(設問1)
ナッシュ均衡となる戦略の組み合わせとして、最も適切なものはどれか。
ア A1,B1 イ A2,B3 ウ A3,B1
エ A3,B3 オ A4,B3
(設問2)
企業Aと企業Bがそれぞれミニマックス戦略をとった場合、各企業が採用する戦略として最も適切なものはどれか。
ア A1,B1 イ A2,B3 ウ A3,B1
エ A3,B3 オ A4,B3
さてゲーム理論に入りました。近年のゲーム理論の出題は難易度が増しているような気がしてなりません。著者が受験した27年度では「バックワードインダクション」が出題されています。試験会場で「???」となりましたよ(笑)
さて、設問1はナッシュ均衡を見つけるだけです。各企業がもっとも高い利得を選ぶ戦略です。
企業Aが
戦略A1を採用すると、企業BはB3を採用
戦略A2を採用すると、企業BはB3を採用
戦略A3を採用すると、企業BはB1を採用
戦略A4を採用すると、企業BはB3を採用
企業Bが
戦略B1を採用すると、企業AはA1を採用
戦略B2を採用すると、企業AはA1を採用
戦略B3を採用すると、企業AはA2を採用
戦略B4を採用すると、企業AはA4を採用
各企業が採用した戦略の利得を太字にしました。
企業B
戦略B1 戦略B2 戦略B3 戦略B4
企 戦略A1 (85,35) (70,25) (20,55) (10,40)
業 戦略A2 (75,45) (40,45) (30,50)(15,30)
A 戦略A3 (80,55) (60,45) (25,45)(20,50)
戦略A4 (60,30) (65,20) (10,70)(40,20)
したがって、ともに太字になっているのは(A2,B3)ですから、正解は、イ です。
次は設問2。
ミニマックス理論とは、企業Aが選択した戦略に対して、企業Bはその下でAの利得を最小化する戦略を選んでくる。それに対し、企業Aはその中でもっとも自社の利得が高いものを選ぶという戦略だ。
実はこの過去問にあたるまで知らない理論だった。
相手の選んだ戦略に対して、相手の利得がサイテーになる戦略をあえて選択するというのがミニマックス理論だ。
企業B
戦略B1 戦略B2 戦略B3 戦略B4
企 戦略A1 (85,35)(70,25)(20,55) (10,40)
業 戦略A2 (75,45)(40,45)(30,50)(15,30)
A 戦略A3 (80,55)(60,45)(25,45)(20,50)
戦略A4 (60,30)(65,20)(10,70)(40,20)
まず、企業AがA1を選択したとすると、企業Bは
自社の利得が最も高いものを選ぶ → ナッシュ均衡の求め方
相手の選んだ戦略の中で相手の利得がもっとも低いものを選ぶ
→ ミニマックス理論の考え方
というわけだ。
これに基づいて考えると、
企業Aが
A1を採用 → 企業BはA1の中でもっとも企業Aの利得が低いB4を採用
A2を採用 → 企業BはA2の中でもっとも企業Aの利得が低いB4を採用
A3を採用 → 企業BはA3の中でもっとも企業Aに利得が低いB4を採用
A4を採用 → 企業BはA4の中でもっとも企業Aの利得が低いB3を採用
すると、企業Aは、相手が選んだ戦略の中で企業Aの利得がその中でも最も高いものを選ぶから最終的にA3を採用する。
ついで、企業Bが
B1を採用 → 企業Aは企業Bの利得がサイテーなA4を採用
B2を採用 → 企業Aは企業Bの利得がサイテーなA4を採用
B3を採用 → 企業Aは企業Bの利得がサイテーなA3を採用
B4を採用 → 企業Aは企業Bの利得がサイテーなA4を採用
すると、企業Bは、相手が選んだ戦略の中で企業Bの利得がその中でも最も高い戦略を選ぶから最終的にB3を採用する。
したがって、企業Aの戦略はA3であり、企業Bの戦略はB3であるから、
正解は、エ である。