自称週末ファーマーの国家試験受験記

自己啓発の延長なのか、自己実現の手段なのか、はたまた意地の張り合いか。生きているうちに“何か”を成し遂げたいから走り続けているような感じがする

経済学・経済政策【平成22年度 第2問(設問2)】

【平成22年度 第2問(設問2)】
 貯蓄に関する下記の設問に答えよ。

(設問2)
 個々の家計において、収入のうち、どの程度を消費に回し、どの程度を貯蓄に回すかは、下図で示される「現在の消費」と「将来の消費」に関する無差別曲線と予算制約式によって決定される。無差別曲線の位置・形状の変化を通じて貯蓄額に影響を与えることを示す最も適切なものを下記の解答群から選べ。

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〔解答群〕
ア 家族の構成員が新たに働くことによって収入が上がり、貯蓄額が上昇する。
イ 定年退職して収入が下がり、貯蓄額が低下する。
ウ 利子率が低下することで、貯蓄の魅力が低下し、貯蓄額が下がる。
エ 老後の生活への不安が高まり、貯蓄額が上昇する。

 

 

 

 

 

 

 

異時点間の最適消費を問うています。これがなかなかやっかいなんですな。
収入が上昇すれば予算制約線は右上に平行シフトします。逆に収入が減少すれば予算制約線は平行に左下にシフトします。
また、消費に使われない部分は貯蓄になり、利子が付くものとします。この利子率は貯蓄も借入も利子率は同じだと仮定します。
利子率が上昇すると将来の消費のために現在の収入を貯蓄しようとします。ですから、点Aは上方にシフトし、点Bは原点方向にシフトします。
つまり利子率の変動は縦軸切片または横軸切片のシフトです。

下図の点Eは最適消費点です。

点Aは現在の消費がゼロなので現在の収入全てを将来のために貯蓄する点です。
逆に点Bは将来の消費がゼロです。
いま、利子率=r、現在の収入=Y1、将来の収入=Y2 とすると、点Aでは現在の収入全てを貯蓄しますから、その貯蓄額は(1+r)×Y1 です。したがって、点Aの座標は、( 0 , (1+r)Y1+Y2 ) です。

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これらを踏まえて選択肢の検討に入ります。
アですが、収入が上がり、貯蓄額が増加するとあります。収入が上がるというのは予算制約線の右上シフトになりますから無差別曲線の位置・形状が変化するわけではありません。ゆえに不適。
イです。今度は逆に収入が下がりとありますから、予算制約線の左下シフトです。ゆえに不適。
ウは、利子率の低下です。利子率が低下すると点Aは下方シフト、点Bは右方にシフトします。ゆえに予算制約線のシフトですから不適。
エは、老後の生活への不安とあります。本肢は収入が上がったも下がったも書いていません。現在の収入の状態で老後が不安なので貯蓄額が上昇すると解釈しました。そうすると、消費と貯蓄の比率が代わることを意味しますから予算制約線ではなく、無差別曲線の形状が変化します。ゆえに本肢は正しい記述。
以上により、正解は、エ である。