自称週末ファーマーの国家試験受験記

自己啓発の延長なのか、自己実現の手段なのか、はたまた意地の張り合いか。生きているうちに“何か”を成し遂げたいから走り続けているような感じがする

財務会計【平成18年度 第7問】

【平成18年度 第7問】
 税効果会計について述べた次の文章を読んで、下記の設問に答えよ。

 一時差異等に係る税金の額は、将来の会計期間において回収または支払いが見込まれない税金の額を除き、①繰延税金資産または②繰延税金負債として計上しなければならない。繰延税金資産については、将来の回収の見込みについて毎期見直しを行わなければならない。


(設問1)
文中の下線部①を計上しなければならない事項として、最も適切なものはどれか。

ア 受取配当金の益金不算入額
イ 寄付金の損金不算入額
ウ 減価償却費の損金算入限度超過額
エ 交際費の損金不算入額

 

(設問2)
文中の下線部②に関して述べた以下の記述のうち、最も適切なものの組み合わせを下記の解答群から選べ。

a 一時差異が解消するときにその期の課税所得が減額される。
b 一時差異が解消するときにその期の課税所得が増額される。
c 繰延税金負債は、企業会計上の資産計上額が税務上の資産計上額を上回っ
 ている場合に生じる。
d 繰延税金負債は、企業会計上の負債計上額が税務上の負債計上額を上回っ
 ている場合に生じる。


〔解答群〕
ア a と c   イ a と d   ウ b と c   エ b と d

 

(設問3)
事業年度における一時差異の発生等に関する資料は次のとおりである(単位:千円)。

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 法人税等の実効税率を40%とすると、期末の繰延税金資産繰延税金負債の金額の組み合わせとして、最も適切なものはどれか(単位:千円)。

ア 繰延税金資産 0     繰延税金負債 320
イ 繰延税金資産 160   繰延税金負債 280
ウ 繰延税金資産 320   繰延税金負債 0
エ 繰延税金資産 440   繰延税金負債 160

 

 

 

 

 

 

 

税効果会計について基本的な論点を問うています。
なかなかみみっちくて理解不能な論点ですが、ここは自分の知識を整理する意味でも確認しておこうと思います。

そもそも税効果会計とは、企業会計上の利益と税務上の所得が異なるために法人税等の計算において合致しない場合があります。そのときに企業会計上の利益(収益-費用)と税法上の所得(益金-損金)とを一致させることをいいます。

この税効果会計は次のように分類できます。
①永久差異
②一時差異 → 将来減算一時差異と将来加算一時差異

利益と所得のズレが永久に埋まらないものを永久差異といいまして、これは税効果会計の対象にはなりません。
逆に利益と所得の差異があるけれど、その差異はいずれ一致し、それを調整できるものが一時差異です。こちらは税効果会計の対象になります。

永久差異の具体例としては、
・寄付金の損金不算入額
・受取配当金の益金不算入額
・交際費の損金不算入額
などがあり、これらは永久に利益と所得の差異は解消されないので税効果の対象にはなりません。

一方、一時差異の具体例としては
棚卸資産評価損
・貸倒引当金の繰入限度額超過
減価償却費の損金算入限度額超過
などがあります。

この一時差異について少し細かく見てみましょう。
まずは企業会計上の利益と税法上の所得に差異が出るということについて図示してみましょう。

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まずは将来減算一時差異からやりましょう。
「今期は税金として取っちゃうけれど、次の税金のときに相殺するからね」というものです。税務上の所得があるもんだから、企業会計上で利益がなくても税法上は税金を取れるってことだし、今回は許してよ。次に相殺してあげるからさ、みたいなイメージでしょうか。

将来減算一時差異は、企業会計上の利益よりも税務上の所得が多い場合に発生します。利益よりも多くの税金を支払ってしまうので、先払いのイメージになり、「繰延税金資産」になります。
ここでは、“将来減算一時差異は繰延税金資産”と覚えます。

次に将来加算一時差異ですが、
「今期は税金として取れなかったけれど、次は絶対にとってやるぜ」みたいなものです。

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これは企業会計上の利益が税務上の所得よりも多いケースで発生し、利益が出ているから税金としてブン取りたいんだが、税務上では取れないから次回取ってやるということです。後に支払わないといけない、という意味で繰延税金負債になります。
ここでは、“将来加算一時差異は繰延税金負債”と覚えます。

例えば、
貸倒引当金が増加した。でも損金に算入できる限度額を超過してしまった。
でも引当金に繰り入れてしまっているので利益が少なくなっちゃった。
限度額を超過した分は損金に出来ないから税務上の所得は多いままじゃん。
今期は多く取られるなぁ。
でも将来減算一時差異になるから、税金を先払いしたと思おう。
だからB/Sに繰延税金資産として計上するんだ、
みたいな感じです。

なお、重要性に乏しい一時差異等については繰延税金資産または繰延税金負債を計上しないこともあります。

さて、設問1からみていきましょう。

下線部①は繰延税金資産ですね。会計上の利益よりも税務上の所得が多い場合に発生しますです。選択肢を検討しましょう。
ア:受取配当金の益金不算入額は永久差異ですから不適。
イ:寄付金も永久差異。
ウ:減価償却費の損金算入限度超過額は一時差異。
エ:交際費は永久差異。
ゆえに一時差異は減価償却費のみなので、正解は、ウ である。

次は設問2です。
繰延税金負債について問われています。
繰延税金負債は将来加算差異ですから、「次ブン取るぜ」のパターンです。企業会計上の利益の方が多いのに、税務上の所得が少ないもんだから税金をブン取れないというやつですね。選択肢を検討します。
a:繰延税金負債は将来税金が加算されるので、不適。
b:繰延税金負債とは、利益があるのに所得がないから税金を取れないだけで、実は利益があったんだから次とってやるぜ、ということです。ですから加算されます。ゆえに正しい記述。

c:繰延税金負債は「もうけているのに所得が少ない」から発生します。つまり、会計上の利益より税務上の所得が少ないということですから正しい記述です。
d:負債は特に関係ないっす。

以上により、正解は、ウ である。

次は設問3です。表が出てきました。表を確認しましょう。
貸倒引当金の損金算入限度超過額は期首700で解消700ですが、800発生しています。だから損金に算入できなかったのが800だったということですね。
他方、棚卸資産の評価損は期首にあったものは解消され、当期の発生はナシですね。
貸倒引当金の損金算入超過限度額は損金として算入出来ないけれど、引当金として設定したもんだから利益が少なくなっています。
一方、この800という引当金の超過額は損金としては認められないからこの800も税務上では課税所得になるわけです。つまり、利益よりも税務上の所得が多いので税金を多く取られてしまい、次に相殺するよ、という将来減算一時差異です。

将来減算一時差異はすなわち繰延税金資産ですね。
あとは実効税率=40%ですから、800×40%=320です。
以上により、繰延税金資産が320ですから、借方に320の記載があるウが正しい。
以上により、正解は、ウ である。