自称週末ファーマーの国家試験受験記

自己啓発の延長なのか、自己実現の手段なのか、はたまた意地の張り合いか。生きているうちに“何か”を成し遂げたいから走り続けているような感じがする

経営法務【平成20年度 第4問】

【平成20年度 第4問】

中小企業診断士であるあなたは、X株式会社の全株所有者である甲社長から相談を受けた。以下は、あなたと甲社長との会話の一部である。この会話を読んで、下記の設問に答えよ。

 

甲社長:「私もだいぶ高齢になったので、そろそろ引退しようと思っているんで

     すが、会社にはどうも適当な後継者がいないんですよ。それで、どう    

     しようかと思っていたら、どうもY株式会社が引き継いでくれそうな感

     じなんです。

     私が持っている100パーセントの株式をY株式会社に譲渡しようかと

     思ったのですが、当社は、若干ですが、不動産の賃貸業もやっていま

     すから、Y株式会社に引き継いでもらうのは本業だけにして、不動産の

     賃貸業は残しておこうかと思うんです。

     賃貸業でもちょっとした収入になりますから、私の生活の足しにもな

     りますし、私一人でできますから。そういったこともできますか

     ね。」

あなた:「事業譲渡、会社分割の方法で可能になると思いますよ。」

甲社長:「事業譲渡というのは、分かるのですが、会社分割というのを使うとど

     ういう形に進めるわけですか。」

あなた:「( A )」

甲社長:「なるほど。事業譲渡と会社分割なら、どちらの方がいいわけですか。」

あなた:「どちらにも一長一短ありますし、Y株式会社の都合にもよりますから、

     何ともいえません。」

甲社長:「じゃあ、この2つの方法で、何か違うところがあるのですか。」

あなた:「ありますよ。たとえば、( B )」

 

 

(設問1)

会話の中の空欄Aに入る文章として最も適切なものはどれか。

 

ア 不動産業をX株式会社に残して、会社分割の方法によって、本業を行う子会社

  を作ります。それから、その子会社の株式をY株式会社に譲渡します。

イ 本業をX株式会社に残して、会社分割の方法によって、不動産業を行う子会社

  を作ります。その子会社設立と同時に、その子会社の株式全部をY株式会社に

  割り当てます。

ウ 本業をX株式会社に残して、会社分割の方法によって、不動産業を行う子会社

  を作ります。それからX株式会社の株式をY株式会社に譲渡します。

エ 本業を分割して、当然にY株式会社の一部門とすることが出来ますから、その

  結果、甲社長もY株式会社の株主になることができます。

 

 

(設問2)

会話の中の空欄Bに入る文章として最も適切なものはどれか。

 

ア 事業譲渡の場合は、金銭が対価でなければなりませんが、会社分割の場合

  は、法律上、Y株式会社の株式が対価でなければなりません。Y株式会社に

  とっては、会社分割の方が、資金手当が必要でない点がメリットとなりま

  す。

イ 事業譲渡の場合は、譲渡した部分は、Y株式会社の一部として組み込まれます

  が、会社分割の場合は、法人格を保ったまま、会社ごとY株式会社の子会社に

  なります。

ウ 事業譲渡の場合は、譲渡の対価は当然にY株式会社から甲社長に支払われます

  が、会社分割の場合は、譲渡の対価は当然にY株式会社からX株式会社に支払

  われることになります。

エ 事業譲渡の場合は、取引先も従業員もY株式会社に引き継がれますが、会社分

  割の場合は、取引先や従業員から個別の同意が必要となります。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さーて、コイツはどうやってやっつけていきますかね。

選択肢を一つずつ検討するしかなさそうかな。

まずは設問1からいきましょうか。

会社分割の進め方を問われた“あなた”の回答を選びます。甲社長は不動産の賃貸業は残しておきたいというのが希望なので不動産関連の事業が残るような進め方を選びます。本業はY株式会社に譲ってもいいといっていますね。

アです。不動産業をXに残します。本業を行う子会社を作ります。その子会社の株式をY株式会社に譲渡すれば子会社はYのものであり、不動産業は手元に残ります。ゆえにこれは正しい記述です。

イは、子会社が不動産業になり、その子会社の株式をY株式会社に譲渡すると、不動産業がYの傘下に入ります。すると、不動産業を残したいという希望が達成出来ないから不適です。

ウは、本業はXに残し、不動産業の子会社を作る。X株式をY株式会社に譲渡すると、不動産業の子会社もY株式会社の子会社になってしまい、希望に適わず不適。

エは、本業を分割しただけだとY株式会社の一部門になりません。変な肢です。

したがって、正解は、ア となる。

 

次は設問2。これは事業譲渡と会社分割の違いを問うています。

選択肢の検討を行います。

アです。事業譲渡は対価は金銭でなければならないとあります。対価は金銭とは限りません。「財産」であればよく、なにも金銭に限らないので前段は不適です。会社分割の対価は株式でなければならないとする後段も不適です。株式だけでなく、社債だって新株予約権でもよいことになっています。

イは、事業譲渡は承継会社の一部門になりますので前段は正しい記述ですね。会社分割は本業を子会社化してそれをY株式会社に譲渡しますから、子会社がそのままY社の所有になるわけです。つまり法人格を保ったまま譲渡されるのでこれも正しい記述です。

ウですが、譲渡の対価は会社に支払われるのであって、個人に支払われるのではありませんです。後段は正しい記述です。

エは、事業譲渡の場合は取引先、従業員はそのままY株式会社に引き継がれる記述はおかしいです。事業譲渡は事業そのものを譲渡するのであって従業員や取引先まで譲渡する必要はありません。また、会社分割における従業員の処遇は労働契約承継法に基づくものとなるので個別の同意は不要。取引先については、債権者保護手続きにより個別の同意は不要とされる。ゆえに不適。

以上により、正解は、イ である。