第56話 経営法務⑧ あなたの会社は何会社ですか?
まだまだ株式会社の機関設計は続きます。今回で最後になるかなぁ。
5.監査役設置会社
原則として監査役の設置は任意だが、監査役を設置しなければならない会社もあるので注意。監査役の員数は監査役会を設置しなければ1人(以上)いればよい。
●監査役を設置 → 取締役会設置会社
●監査役を置かなくてもいい → 株式譲渡制限会社かつ会計参与設置会社
●監査役を置いてはいけない → 指名委員会等設置会社、監査等委員設置会社
ちなみに監査役は通常、取締役の業務執行を監査する業務監査と、会計に関する監査を行う会計監査とがある。監査役会設置会社および会計監査人設置会社以外の株式譲渡制限会社は、定款に定めることで監査役の監査の範囲を会計監査に限定することができる。このような監査役を会計監査限定監査役または小監査役とよぶ。
会計監査に限定された場合、業務監査を行えないので通常の監査役とは権限が異なる。
なお、小監査役のみを設置している場合、その会社は会社法上の監査役設置会社とはならない。
6.監査役会設置会社
監査役は複数いても各自が独立した権利と義務を有する。監査役会設置会社は取締役会設置会社でもある。大会社かつ公開会社も監査役会を設置しなければならないが、大会社かつ譲渡制限会社は任意。指名委員会等設置会社および監査等委員設置会社は監査役会を設置することはできない。
●監査役会設置会社 → 取締役会設置会社、大会社かつ公開会社
<監査役会の構成>
3人以上の監査役(そのうち半数以上は社外監査役)が必要。監査役が2人のときは監査役会を設置できない。監査役会設置会社は当然に監査役設置会社となる。
●監査役会 → 3人以上の監査役。ただし、その半数以上は社外監査役
<監査役会の権限>
監査報告の作成や常勤の監査役の選定および解職など
<監査役会の運営>
招集権は各監査役が有する。取締役会とは異なり、特定に監査役に招集権を与えることができない。
招集手続きは基本的には取締役会と同様。監査役会の決議は監査役の過半数をもっておこなうが、取締役会とは異なり、定足数がない。監査役会の議事録は10年間本店に備え置く。
7.会計監査人設置会社
会計監査人は公認会計士または監査法人のみに資格がある。これはつまり、大規模な株式会社の計算書類の適正を確保するためには会計のプロに任せるべきだという考えに基づく。
会計監査人の設置は原則任意。会計監査人設置会社は監査役を設置しなければならない。会計監査人は会計監査専門であり、業務監査は監査役が担うという考え。
●会計監査人設置会社 → 指名委員会等設置会社、監査等委員設置会社、大会社(譲渡制限、公開問わず)
8.会計参与設置会社
会計参与はすべての株式会社で設置が任意。逆に会計参与が設置できるのは大会社以外の譲渡制限会社かつ取締役会設置会社で、しかも、監査役を置かない場合のみ。
そもそも取締役会を設置すると、監査役を設置する義務が生じる。大会社は会計監査人が会計監査を担うため監査役が業務監査を行うことになり、大会社は監査役を設置しなくてはならない。大会社以外でも公開会社は監査役の設置が必須となるため、会計参与が設置できるのは大会社以外かつ譲渡制限会社ということになる。
さらには大会社かつ譲渡制限会社で取締役会不設置会社は監査役の設置が任意。大会社かつ譲渡制限会社で取締役会設置会社は監査役または会計参与いずれかを設置する必要がある。
●会計参与設置会社
→ 大会社以外の譲渡制限会社かつ取締役会設置会社で監査役を設置していない会社
9.登記
実は株式会社の機関設計および種類は登記事項であり、登記後でなければ善意の第三者に対して対抗できない。登記事項に変更があった場合には登記の変更が必要。
株式会社の機関の登記には代表取締役および代表執行役の住所も登記しなければならない。
その他登記事項には目的、商号、本店および支店の所在場所、資本金の額、発行可能株式総数、発行する株式の種類も登記する必要がある。
ここまで株式会社の機関設計を概観した。結構ややこしいこともあるけれど、楽しく学習できたというのが感想だ。
法改正のからみもあり、常に最新情報の収集をする必要がある。
なお、スピテキには「指名委員会等設置会社」「監査等委員設置会社」の説明はない。法改正前にスピテキを購入したため。
続く。