自称週末ファーマーの国家試験受験記

自己啓発の延長なのか、自己実現の手段なのか、はたまた意地の張り合いか。生きているうちに“何か”を成し遂げたいから走り続けているような感じがする

第72話 経営法務⑯ 再編の続き

組織再編の続きです。①事業譲渡 ②吸収合併 ③新設合併 ④株式交換 ⑤株式移転まで終了したものの、まだ⑥吸収分割 ⑦新設分割 とややこしい2つを残しているのであります。これが終われば、簡易組織再編と略式再編が待っているからねぇ。最後の山場といったところでやっと7合目に差し掛かったみたいな感じであります。
ちなみに⑥⑦を併せて「会社分割」といいます。

吸収分割

 株式会社または合同会社がその事業に関して有する権利義務の全部または一部を分割後他の会社に承継させること
 例えば、
    甲社にはP事業とQ事業がある
    乙社にQ事業を承継させたい
    このとき、甲社を分割会社、乙社を承継会社とよぶ
といった感じだが、事業譲渡との違いは何だろうか?という疑問が・・・。
実は、会社分割は、会社が事業の全部または一部を他の会社に承継させて、その事業を自社から分割し切り離し外部に出すことだが、事業譲渡と比べて債権者の個別の同意など煩雑な手続が不要であり、迅速な企業再編が可能だといわれる。

 事業譲渡 → 対価として譲受会社から金銭をもらう
 ●吸収分割 → 対価として承継会社の株式を保有する

甲社のQ事業を乙社に承継させたいのだから、甲社はQ事業を切り離し、乙社に承継させ、乙社株式を甲社に割り当てる。金銭の代わりに株式をもらうイメージだ。結果として、Q事業は乙社に承継され、甲社は乙社株を保有することになる。このとき、甲社は乙社株を割り当てられたからといって親会社になるとは限らないことに注意が必要だ。

 ●承継会社の株式割当 → 親子関係ができるとは限らない

続いては新設分割にうつろう。

新設分割

 1または2以上の株式会社または合同会社がその事業に関して有する権利義務の全部または一部を分割により新設する会社に承継させること
例えば、
    甲社にはP事業とQ事業がある
    Q事業を切り離し、別会社でやらせたい
    新設する丙社に承継させる
といった感じだ。
甲社はQ事業を、新設される丙社に承継することで切り離すことができる。さらに新設された丙社株式を甲社に割り当てることで親子関係が成立する。このとき、分割会社である甲社は親会社、新設された丙社は子会社となる

 ●新設分割 → 親子関係ができる

⑥⑦共通です。主な規定は次のとおり。
吸収分割契約、新設分割計画について、原則株総特決が必要。当該内容を記載した書面は一定期間本店に備え置き必要。会社分割に反対する株主には株式買取請求権がある。会社分割は債権者の利害に影響を与える可能性があるため、債権者保護手続が必要。吸収分割、新設分割いずれも分割会社になれるのは株式会社または合同会社。承継会社、新設会社はすべての会社でOK。だから分割会社である、株式会社の甲社は、丙社が合名・合資・合同・株式会社の何であれ、承継させることができる。また、分割会社である、合同会社の甲社は、新設する会社を株式会社でも持分会社にでもすることができる。

 ●吸収分割契約、新設分割計画 → 株総特決
 ●当該内容を記載した書面 → 一定期間本店に備え置き必要
 ●会社分割 → 債権者保護手続必要
 ●分割会社 → 株式会社または合同会社のみ
 ●承継会社、新設会社 → すべての会社でOK

ここで、会社分割に伴う労働契約の承継等に関する事項を概観しましょう。

会社分割は吸収分割、新設分割とありますが、当該業務に従事する労働者にとっては会社が変わることで大きな影響が出てきますね。なので、労働者保護の観点から労働契約承継法が施行されているわけです。
ポイントは分割対象の事業に「主に従事しているか」という点と「分割契約や新設分割計画に労働契約が承継される旨の定めがあるかどうか」という点の2つ。ちなみに労働者にはパート、アルバイトも含みます
事業譲渡では、譲渡会社の労働者だったはずなのに、譲受事業に携わっていたからといって、譲受会社の労働者になるわけではない。承継させるためには労働者本人の個別の同意が必要となる。
合併では当然に承継。株式交換や株式移転は労働契約の承継は関係ない。
会社分割については、「主に従事している」「分割契約・計画に定めの有無」で変わってくる。

 ●承継される事業に主に従事する者
        分割契約・計画に定めアリ → 当然に承継
 ●承継される事業に主に従事する者
       分割契約・計画に定めナシ → 原則残留。異議を申し出れば承継
 ●承継される事業に主に従事する者以外
       分割契約・計画に定めアリ → 原則承継。異議を申し出れば残留
 ●承継される事業に主に従事する者以外
       分割契約・計画に定めナシ → 当然に残留

んー、なかなかメンドクサイな。

続く。