自称週末ファーマーの国家試験受験記

自己啓発の延長なのか、自己実現の手段なのか、はたまた意地の張り合いか。生きているうちに“何か”を成し遂げたいから走り続けているような感じがする

第102話 経営法務32 著作権

 法務の二つ目のヤマである産業財産権が終了した。でもまだ著作権が残っているし、不正競争防止法も残っているし、独占禁止法もあるし、消費者保護法制も残っている。まだまだ続きます。
 
 今回は著作権について概観します。

 著作権法は著作物に関する法律である。著作権法では、日本国民が創作した著作物や、最初に日本国内で発行された著作物等を保護対象にしている。著作権法の目的は、著作者などの権利保護と第三者による文化的所産の公正な利用によって文化の発展に寄与することである。

 著作権法 → 日本国民の著作物の保護

 著作物の定義はこうだ。「著作物とは、思想または感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術または音楽の範囲に属するもの」と定義されている。「思想、感情」だからデータなどは除外されるし、「創作的に」とあるから事実や模倣は対象外だし、「表現したもの」とあるのでアイディアはダメだし、「文芸、学術、美術または音楽の範囲」とあるから農作物や工業製品は除かれる

 ●著作物 → 思想または感情を創作的に表現したもの

では具体的にどんなものが著作物にあたるのかというと、
1)言語の著作物であり、講演、論文、小説、詩歌など
2)音楽の著作物であり、楽曲、楽曲を伴う歌詞
3)舞踊、バレエ、ダンス、パントマイムの振り付けなどもそう
4)美術の著作物としては絵画、版画、彫刻、マンガ、書など
5)建築物の著作物
6)地図、図形の著作物、図表、設計図、地球儀など
7)映画の著作物としては劇場用映画、アニメ、ビデオ、ゲームソフトなど録画されて動く影像
8)写真やグラビア
9)プログラムの著作物
が該当する。
一方で、著作物にあたらないとするものもある。例えば、
1)憲法その他の法令
2)国や地方公共団体などの告示、訓令、通達など
3)三番所の判決、決定、命令など
4)上記の翻訳物や編集物
が該当する。

その他の著作物として、二次的著作物というのがある。
二次的著作物とは、原著作物(一次的著作物)を翻訳、編曲、変形、脚色、映画化、その他翻案することにより創作した著作物のこと。外国の小説を翻訳したり、小説を映画化したり、既存の楽曲を編曲したものなどが該当する。
なお、二次的著作物を創作する場合には原作の著作者の許諾が必要である。また、第三者が二次的著作物を利用する場合には、二次的著作物の著作者に加えて原作の著作者の許諾も必要である。

 ●二次的著作物の創作 → 原作の著作者の許諾必要
 ●第三者による二次的創作物の利用 → 二次的著作物の著作者および原作者の許諾必要

また、共同著作物とは、2人以上の者が共同して創作した著作物であって、その各人の寄与を分離して個別的に利用することが出来ないものをいう。共同著作物は、原則として、全員が共同でなければ権利を行使出来ない。ただし、権利侵害に対する差止請求などの手段は、ここの著作者・著作権者に認められる。

 ●共同著作物 → 共同でなければ権利行使不可
         ただし、権利侵害への対抗手段は個々に可

 次は“著作者”について考える。
著作者とは著作物を創作する者のことである。そのモノが創作性があれば、たとえ、幼稚園児が描いた絵画でも著作物にあたる。
通常は著作者イコール著作権者であるが、実は、著作者と著作権者は異なる概念を持つ。著作者は著作人格権(後述)と著作財産権をもつので、当然に譲渡などが可能だ。当該著作権が譲渡された場合、著作者イコール著作権者にならないことがある。創作という行為は自然人しか出来ないため、原則として自然人しか著作者になれない。
なお、一定の要件を満たした場合、法人その他の使用者が著作権者となる(職務著作。後述する)。

 その職務著作であるが、著作権法では、従業員が職務上作成する著作物は、使用者の名義の下に公表する場合において、契約、勤務規則その他に別段の定めがない限り、はじめから使用者が著作者になるとしている。

 ●職務著作 → 従業員が創作者でも使用者名義で公表すると使用者側(会社等)が著作者

「使用者の名義の下に公表する場合」、当該著作物は使用者側が著作者になるが、従業者が個人名で著作物を公表する場合は、その従業者が著作者になる。

 ●職務創作 → 従業者名義で公表すると従業者が著作者

なお、著作権法は、職務著作に係る法人について、法人格を有さない団体も可、としているので、自治会やPTAも職務著作の規定が適用されるとしている。

 続いて著作権についてみていこう。
 著作権は、「著作者の権利と」「著作隣接権」に分類される。さらに著作者の権利は、「著作人格権」と「著作財産権」に分類される。
1.著作人格権
 一身専属的な人格的利益を保護する権利で、譲渡・相続出来ない権利とされている。
公表権
 著作物を公表するかどうか、または公表する場合の時期や方法について決定する権利
氏名表示権
 著作物に著作者名を表示するかどうか、また表示する場合どのように表示するかについて決定する権利
同一性保持権
 著作者の意に反して著作物の内容や題名を勝手に変えたり、切除したりさせない権利

 ●著作人格権 → 一身専属的。譲渡・相続出来ない

2.著作財産権
 著作者の創作した著作物が、他人に勝手に使用されることを禁止し、著作者の経済的利益を保護する権利。カンタンに言えば、無断で○○されない権利のことをいう。著作財産権は譲渡・相続できる。
①複製権
 著作物を複製する権利。複製とは、印刷、写真、複写、録音、録画、PCへのコピーなどをさす。
②上演権・演奏権
 著作物を公衆に、直接見せる、または聞かせるために、演劇を上演したり、音楽を演奏したりする権利。録音物・録画物を再生することも含まれる。
③上映権
 映画や写真などの著作物を映写する権利。
公衆送信権・伝達権
 公衆送信権とは、著作物を公衆送信する権利で、伝達権とは、公衆送信されるその著作物をTVなどの受信装置を用いて公に伝達する権利。著作物を無断でアップロードすることは著作権侵害となる。
⑤口述権
 小説などの言語著作物を公衆に対して口頭で直接伝達する権利
⑥展示権
 美術の著作物、まだ発行されていない写真の著作物を公に展示する権利

⑦頒布権
 映画の著作権を、その複製物により頒布(譲渡・貸与)する権利。
⑧譲渡権
 映画以外の著作物について、その原作品または複製物の譲渡により公衆に提供する権利。用尽論が明記されている。
貸与権
 映画以外の著作物について、その複製物の貸与により公衆に提供する権利。
⑩二次的創作物の創作権
 著作物を翻訳、編曲、変形、脚色、映画化、その他翻案などして、新たに創作行為を加えて二次的著作物を創作する権利。なお、変形とは絵画を写真にしたり、写真を絵画にしたりすること。翻案とは小説を脚本にしたりすること。つまり内容を変えずに表現を変えること。
⑪二次的著作物の利用権
 二次的著作物の原著作物の著作者(原作者)は、その二次的著作物の利用に関し、その二次的著作物の著作者がもつ権利と同一の権利を持つ権利。原作者なんだから二次的著作物だって使えるんだぜ~という権利。

3.著作隣接権
 実演家(俳優・歌手・演出家など)、レコード製作者、放送事業者、有線放送事業者に認められた権利。
著作隣接権者は次のとおりで、実演家・レコード製作者・放送事業者・有線放送事業者に限られる。なお、出版者には著作隣接権は発生しない。著作隣接権が認められている四者に、他人が無断で○○することを差し止めたり、使用料などの条件を付けて他人が丸○することを許諾する「許諾権」が認められている。他人が○○したときに使用料を請求できる報酬請求権は実演家およびレコード製作者に認められている。

 著作隣接権の許諾権 → 四者すべてに認められる
 ●著作隣接権の報酬請求権 → 実演家およびレコード製作者に認められる

4.著作権の発生
 著作権には産業財産権のような手続や出願、登録など不要で、創作と同時に著作者に著作人格権、著作権が発生する(無方式主義)。
 ●創作と同時 → 著作人格権と著作権が発生

著作権の発生要件としての登録は不要だが、著作権は第三者に対する対抗手段としての登録制度を設けている。プログラムの著作物を除き、著作物を創作しただけでは登録できず、公表、譲渡(移転)などの事実が必要。

 著作権の登録 → 対抗手段として登録

5.著作権の存続期間
 著作権の存続期間は、原則として著作権の効力発生(創作時)から著作者の生存中および死後50年までである。ただし、共同著作物の場合は、最後に死亡した著作者の死亡時から起算して50年となる。

 著作権 → 存命中および死後50年

また、著作人格権は一身専属的な権利なので著作者が死亡すると著作人格権は消滅する。しかしながら、死後においても著作人格権を侵害することを禁じられている。

なお、著作隣接権については、
実演 → その実演から50年
レコード → 発行後50年または録音後50年
放送 → 放送後50年
有線放送 → 有線放送後50年
となっており、例外的に著作権法では映画の著作物の存続期間を公表後70年としている。

5.著作財産権の制限
 著作財産権は例外的に無断でしても侵害にはならない場合がある。たとえば、私的利用の場合。教育に使用する場合。図書館などにおける複製。福祉目的の複製(点字に訳したりなど)。これらの中で試験対策上3つについて詳述する。
①私的利用のための複製
 個人的または家庭内その他これに準じる限られた範囲内での使用は侵害にならない。ゆえに私的範囲を超えれば、営利・非営利を問わず、反復継続性も問わず権利侵害になる。また、違法配信サイトなどの違法なインターネット配信からの音楽や映像を、違法と知りながら複製する行為は私的利用であっても権利侵害となる。

 ●インターネットからの複製 → それが違法と知りながらの行為は私的利用であっても権利侵害

また、DVDなどに付されているコピーガードを不正に外し、それと知りながら複製する行為も私的利用であっても権利侵害となる。

 ●コピーガード → 故意に外し、それと知りながら複製することも権利侵害

②プログラムの著作物の複製物の所有者による複製または翻案
 プログラムの著作物の複製物の所有者が、バックアップ、プログラムの修正・改良を行う場合の制限。これは必要な限度内で行うことは認められている。ただし、所有者であっても複数台のPCで使うための複製は侵害行為となる。
③写り込み等
 平成25年の改正著作権法により、写り込みは著作権侵害とはならない。また、許諾を得るための検討等に必要だと認められる利用、技術の開発または実用化のための試験の用に供するための利用、サーバ内で行われるインターネット上の各種複製等も侵害行為とはならない。

著作権法は、著作者人格権の制限も規定している。
たとえば、プログラムの著作物をバグの修正等の目的で行うことや、建築物の増築・改築・修繕・模様替え等は著作者人格権(同一性保持権)侵害とはならない

 著作者人格権の制限 → 建築物の増築・改築・修繕・模様替え等は侵害ではない

著作権は財産権であるため、産業財産権と同様に移転や譲渡、ライセンス、質権の設定などが出来る。
著作権は移転(譲渡)が可能。無方式主義であるため、登録は不要。第三者に対抗するための手段として登録することは出来る。

 著作権 → 移転(譲渡)可能。登録不要

さらに著作物の作成を他者に委託(発注)した場合、料金支払の有無に関わらず、著作物を作成つまり創作した受注者が著作者となる。たとえば、ゴーストライターなどを雇い、自分に代わって創作させる場合が該当する。
例えば、Aは、自分に代わって作曲するようにBに依頼し、Bはそれを受けた。
この場合、
  A → 発注者。著作者ではない。だから著作者人格権著作権も持たない。だから著作物の利用も出来ない
  B → 受注者。著作者。著作人格権および著作権を持つ
となるわけ。Aが著作物を利用するためには、著作権の譲渡や利用の許諾などを契約に定める必要がある。著作者人格権は譲渡出来ないので、これも契約で「著作者人格権を行使しない」などの条項を定めておく必要がある。

6.著作権の侵害
 分かりやすくいうと、“海賊版著作権法違反ですよ”ということ。
海賊版と知りながら”“知っている”“悪意”というのがキーワードで、海賊版と知りながら輸入したり、販売したり、所持したり、輸出したりすることは権利侵害となる。だから海賊版のコンピュータプログラムだと知りながら会社のPCなどで業務上使用することも権利侵害。

 著作権の侵害 → “海賊版と知りながら”がキーワード

7.著作権侵害に対する手段
 基本的には産業財産権と同じであり、損害賠償請求、差止請求、不当利得返還請求、名誉回復等措置請求が認められている。
また、侵害との警告を受けた場合も基本的には産業財産権と同様の考え方でOKだ。
ただし、著作権には先使用権という概念はなく、仮に同一の著作物を別々の者が創作したとしても、その創作に模倣や盗作がなければ、創作の先後を問わず、それぞれに同一の著作権が発生し、著作権侵害とはならない。
また著作権法では用尽論が明記されているが、これは譲渡権のみの規定となっている。
たとえば、書籍を正当に購入した者が、その書籍を古本屋に売却する行為は、譲渡権は用尽しているため、侵害行為とはならない。しかし、他の支分権は用尽されていないため、書籍を正当に購入した者であっても、権利者の許諾を得ないで、指摘しようの範囲外で複製する行為は著作権侵害となる。

ここまでが著作権の内容だ。やっと終わったぁ~。
ほんと、長いし、細かいなぁ。

続く。