自称週末ファーマーの国家試験受験記

自己啓発の延長なのか、自己実現の手段なのか、はたまた意地の張り合いか。生きているうちに“何か”を成し遂げたいから走り続けているような感じがする

経済学・経済政策【平成26年度 第13問】

【平成26年度 第13問】
 下図の形状をした生産関数について下記の設問に答えよ。ただし、ここでの生産に投入される要素は労働のみであり、その投入量はゼロより大きいものとする。

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(設問1)
 この図に関する説明として最も適切なものはどれか。

ア この生産関数では、限界生産物は労働の投入量が増加するほど大きくなる。
イ この生産関数では、ある労働の投入量のもとで平均生産物は限界生産物より
  も大きい。
ウ この生産関数では、平均生産物は労働の投入量が増加するほど大きくなる。
エ この生産関数では、収穫一定であることを示している。

 

(設問2)
 この図に描かれた生産関数を用いて、縦軸に実質賃金を、横軸に労働量を取り、労働需要曲線を導出する。このとき、労働需要に関する説明として最も適切なものはどれか。

ア 企業の利潤最大化行動を前提として導出される労働需要曲線は、右下がりと
  なる。
イ 利潤最大化を目指す企業は、生産関数の接線の傾きが生産物価格と一致す
  るように、労働量を決定する。
ウ 利潤最大化を目指す企業は、労働の限界生産物がゼロとなるところに労働量
  を決定するため、労働需要曲線は水平になる。
エ 労働需要が実質賃金の増加関数であることは、古典派の第二公準として知ら
  れている。

 

 

 

 

 

 

 

設問1です。
横軸は労働量ですから、限界生産物とは労働量を1単位増加させたとき、生産量が何個増えるか、ですね。
この図は逓減の生産関数です。ですから労働の投入量が増えるほど限界生産物は減少します。この時点でアとエは消去です。
次に平均生産物についてですが、労働量がゼロのとき、生産量もゼロです。平均生産物は直線の式で表されますから、例えば、点Eのときでは生産関数に引いた接線と直線の式を比較した場合、直線の式の方が傾きが大きいことが分かる。点Eにおいては限界生産物よりも平均生産物の方が大きいということになる。

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なお、生産関数に引いた接線は限界生産物を表します。○○曲線を微分すると、限界○○になりますし、微分するとは接線を引くことです。
さらに生産関数は逓減の曲線になっているので労働量が増加するほど限界生産物は逓減します。逆に言えば、投入される労働量と生産量の関係は一定ではないです。ゆえに平均生産物が限界生産物を常に上回るわけではないことに注意しましょう。
したがって、正解は、イ である。

設問2は労働需要曲線について問うています。
労働需要曲線はミクロでもマクロでも出てくる論点です。
ポイントだけを言えば、
①企業は「限界生産力と実質賃金率が等しくなるところで利潤最大となる労働需要量を決定する(古典派の第一公準)」
②家計は「限界不効用と実質賃金率が等しくなるように労働供給量を決定する(古典派の第二公準)」
です。

少し細かく見てみましょう。
労働者を増やしても利潤が増えないときが利潤最大の労働需要量だとします。ここで、労働の限界生産力逓減の法則を仮定すると、労働の限界生産力と労働需要量は減少関数になります。だから右下がり。
企業は限界生産力と実質賃金率とが一致する点で労働需要量を決定します。これは限界生産力ですから、労働を1単位増やしたとき生産量の増分よりも実質賃金率が高ければ、支払いの方が多くなることになり、企業にとってはもうけがなくなるからです。

ゆえに古典派の第一公準と呼ばれますが、「労働の限界生産力と実質賃金率が等しくなる労働需要量が企業の利潤が最大にある」と考えます。
ま、実質賃金が下がるほど(企業の支払が減るほど)、労働需要量は増加するわけですね。

ついでですので、労働供給量の決定について少しふれていきます。
まず、用語の定義ですが、
労働の限界不効用とは、労働時間が1単位増えるときの不満足の増加分のことです。
ここで、限界不効用は労働時間とともに増加すると仮定します。
限界不効用と労働時間は増加関数の関係にありますから、労働時間が増加すると不満足が増えます。
そうすると、家計は、効用が最大となる限界不効用と実質賃金率が等しくなるところで労働供給量を決定するのだといえます。これを古典派の第二公準といいます。

ですので、古典派は、労働需要量も労働供給量も実質賃金率がともに等しいところに決まるとしているので、労働の需給にアンバランスが生じても実質賃金率が伸縮的だから常に失業(非自発的失業)は発生しないとしました。

さて、ここまでくれば設問2は解けますね。
企業が労働需要量を決めるのは限界生産力と実質賃金率が等しくなるところです。イの生産物価格でも、ウの限界生産物ゼロでもありません。
また、労働需要は実質賃金の減少関数であって、増加関数ではないです。
以上により、正解は、ア である。