自称週末ファーマーの国家試験受験記

自己啓発の延長なのか、自己実現の手段なのか、はたまた意地の張り合いか。生きているうちに“何か”を成し遂げたいから走り続けているような感じがする

経済学・経済政策【平成24年度 第15問】

【平成24年度 第15問】
 下図は、ある国の立場から、1つの財の市場のみに注目した部分均衡分析の枠組みを用いて、自由貿易協定の経済効果を示している。当該財の価格がP1である第Ⅰ国からの輸入に、この国では関税を賦課しており、関税賦課後の価格はP2となっている。それが、第Ⅱ国と自由貿易協定を結ぶことによって、第Ⅱ国から価格P3で当該財を輸入できることになった。なお、図中のa~iは線で囲まれた範囲の面積を表すものとする。
 第Ⅱ国と自由貿易協定を結ぶ場合、協定締結後のこの国の経済厚生は、締結前と比較して、どれだけ変化したか、下も適切なものを下記の解答群から選べ。

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〔解答群〕
ア c+d+e+f
イ c+d+f-h
ウ d+e+f
エ d+f-h

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて論点は保護貿易のたぐいに移ります。
保護貿易におけるポイントは、
①小国のモデルでは、輸入国が輸入品に関税をかけると輸入国の総余剰は関税収入の左右の三角形の分だけ減少する
②関税と輸入数量規制の等価命題
→関税と同じ輸入量に数量規制をかけると、余剰の損失は関税と変わらない
補助金の支給
→余剰の損失は関税や数量規制よりも小さくなる

本問は関税を賦課しています。
輸入品に関税を賦課する場合、供給曲線は動きませんです。
輸入品1単位につき、t 円の関税を賦課すると、需要者が最終的に購入する価格は上昇し、その結果、国内価格もP+t 円に上昇します。
つまり、関税をかけると、消費者余剰は必ず減るということです。
当然に余剰分析は関税賦課アリと関税賦課ナシを比較するものとなります。

問題の図を例に確認して見ましょう。

<関税賦課アリ>
・もともとの価格 → P1
・関税賦課後価格 → P2
・消費者余剰 → ab
・生産者余剰 → c
・政府の税収 → 価格差×輸入量なので eh
・総余剰 → abceh
※余剰は記号が付された部分しか示していない

<関税賦課ナシ(自由貿易協定締結後)>
・協定締結後の価格 → P3
・消費者余剰 → abcdef
・生産者余剰 → (記号が付されていないので書きません)
・政府の税収 → なくなった
・総余剰 → abcdef

<賦課アリと賦課ナシとの総余剰の差>
賦課ナシabcdef - 賦課アリabceh = df-h

つまり、dfの部分が増加し、hの部分が減少したということになります。

価格のラインがそれぞれで分かればあとは余剰の分析を行うだけです。また、関税の取扱に注意し、関税は政府の税収になるので足し算しますし、補助金は政府の支出になりますので引き算します。

本問は関税賦課後と自由貿易協定締結後を比較しています。
自由貿易時の余剰と関税賦課時の余剰を比較するのがスタンダードな形といえますが、関税賦課後と自由貿易時の余剰比較になっていますから少しだけ意地悪な感じがします。

以上により、正解は、エ である。