経営法務【平成24年度 第10問】
【平成24年度 第10問】
不正競争防止法の不正競争に該当する商品等表示(人の業務に係る氏名、商号、商標、標章、商品の容器もしくは包装その他の商品または営業を表示するものをいう。以下同じ。)に関する記述として最も適切なものはどれか。
ア 外国のみで著名な商品等表示の使用を第三者に許諾している甲は、その商品
等表示と類似の商品等表示である標章を付した商品を譲渡して、当該第三者
の商品と混同を生じさせる行為を行った乙に対して、その標章を付した商品
の引き渡しおよび損害賠償を請求することができる。
イ 関西地方の需要者の間に広く認識されている商品等表示の使用を第三者に許
諾している甲は、その商品等表示と同一の商品等表示である標章を付した商
品を譲渡して、当該第三者の商品と混同を生じる恐れがある行為を行った乙
に対して、その標章を付した商品の廃棄および標章を製造する装置の除却を
請求することができる。
ウ 関東地方の需要者の間に広く認識されている商品等表示を使用している甲
は、その商品等表示と非類似の商品等表示である看板を使用した商品を譲渡
した乙に対して、その看板の廃棄と謝罪広告を請求することができる。
エ 世界中の需要者に広く認識されている商品等表示を使用している甲は、その
商品等表示と非類似の商品等表示である看板を使用して営業を行った乙に対
して、不当利得の返還およびその看板の廃棄を請求することができる。
この問題はどこを論点にしているのだろう? 不競法における行為の類型なのかな? 不競法は「周知表示混同惹起行為」と「著名表示冒用行為」の2タイプに不正競争行為を類型化している。
①周知表示混同惹起行為
需要者の間に広く認識されている他人の商品等表示と同一または類似の商品等表示を使用し、他人の商品または営業と混同を生じさせる行為
②著名表示冒用行為
他人の著名な商品等表示と同一または類似のものを自己の商品等表示として使用する行為
なお、①の「需要者の間に広く認識」とは周知性が要件とされ、②の「著名」は全国レベルの周知を指すとしている。
各選択肢の記述は長ったらしいけれど、よく見ると消去できる選択肢があることが分かる。
アは「外国のみで著名」とある。だから日本国内では著名ではない。アの記述は著名冒用行為の記述だと分かるが、著名冒用行為は著名を要件としている。だからここが論点ではないな。すると、後段だろうか。一旦保留にします。
イは、「混同惹起行為」の記述だが、関西地方で広く認識されているから周知性はある。しかも同一の商品等表示だ。ここまでは正しい記述です。これも後段が論点になるのかな? 保留。
ウは、周知性はありそうだけれど、そもそも「非類似」でしょ? だから不競法には抵触しないです。なお、非類似ですから「混同惹起行為」にはあたらないし、「著名」ではないので「著名冒用行為」にも該当しないです。
エはこれも非類似ですね。ですからウとエは誤りだと分かりました。
問題の論点はどこだ? まさか後段かな?
ア 商品の引き渡しおよび損害賠償
イ 商品の廃棄および装置の除却
ウ 看板の廃棄と謝罪広告
エ 不当利得の返還およびその看板の廃棄
まさか、この部分を問うているのかな?
不正競争って民法の不法行為の位置づけだからそこを突破口にすればいけるのではないかと思いますね。
損害賠償はできるだろうけれど、商品の引き渡しって出来たっけ? 商品の廃棄なら分かるけれど。廃棄とか謝罪も分かるけど、不当利得の返還ってできるっけ? 侵害行為を行った者に請求できるのは、①差止請求 ②損害賠償請求 ③信用回復措置請求 だったです。
アは、商品の引き渡しは該当しない。ゆえに不適。
イは正しい記述。
ウは後段は正しい記述ですが、非類似なのでそもそも該当せずで不適。
エは、不当利得返還は該当しないので不適。
以上により、正解は、イ である。