自称週末ファーマーの国家試験受験記

自己啓発の延長なのか、自己実現の手段なのか、はたまた意地の張り合いか。生きているうちに“何か”を成し遂げたいから走り続けているような感じがする

経営法務【平成19年度 第11問】

【平成19年度 第11問】

企業甲は、社長乙氏が代表取締役となり設立された携帯電話用のソフトウェアのプログラムを開発する株式会社であり、開発部門の部長丙氏を含む20名の従業員が就業している。

社長乙氏が中小企業診断士のあなたに、従業員にかかわる企業甲の営業秘密の保護の仕方について相談している。

下記の設問に答えよ。

 

社長乙:「うちの営業を担当していた従業員が辞めるらしくてね。うちでもそろそろ、

    企業秘密について何か対策を取らなくてはならないと考えているところなん

    だ。この従業員からは辞めるに際して、守秘義務をうたった誓約書を取った

    ら十分かな。」

あなた:「もちろん、誓約書はあった方がいいですね。でも、誓約書を退職時に取るだ

    けでは不十分ですよ。就業中から秘密情報は企業の重要な財産の一つとして

    守っていくべきですから、御社で企業秘密としたいものを、ちゃんと、法律

    によって保護される「営業秘密」という形にした方がよいと思いますよ。」

社長乙:「営業秘密管理などといわれているものですか。マル秘マークを付けて、文書

    を保存したりするんでしょう。うちでも、重要な文書については

    「CONFIDENTIAL」というハンコを押してますよ。でも、実のところ、我

    が社の場合、一番重要な情報はプログラムなどのデジタルデータでしょう。

    パソコンの中に入っているものまでは、ハンコは押せなくて...。」

あなた:「ハンコを押すかどうかということは、営業秘密であることを示す一つの事情

    にすぎないんです。「営業秘密」と認められる情報といえるためには、もっ

    とたくさんのことをする必要があります。判例経済産業省による指針など

    で示されている3要件を満たさなければなりません。」

社長乙:「何ですか。それは。」

あなた:「( A )、( B )、( C )の3つになります。」

社長乙:「最初は( A )ですか。それは当然ではないですか。」

あなた:「そうですが、実はこの点が認められないために、営業秘密には該当しないと

    して、情報漏洩(ろうえい)された会社側が負けている判決が結構多いんです

    よ。」

社長乙:「判決っていうぐらいだと、会社の方は、当然、営業秘密になるんだと思って

    訴えているんでしょう。( A )について詳しく教えてもらいたいです

    ね。」

あなた:「まず、( A )があると認められるためには、さらに( D )と

    ( E )という要件が要求されています。先ほどのハンコの話は、文書情

    報に接した者にそれが秘密であると認識できるようになっているので、 文書

    については( E )の要件を満たすということがいえますね。ただ、御社

    は、デジタルデータについては何もしていないということになるかもしれま

    せん。」

社長乙:「どうすればよいですか。」

あなた:「まず、情報に接することのできる人を制限するなど、( D )の要件を満

    たすことができるような社内体制を整えること、それについてマニュアルを

    作成し、社内で周知徹底することなど、物理的管理や技術的管理を行い、こ

    れと並行して人的管理を行います。具体的には、就業規則で明示して、従業

    員や新入社員から秘密保持誓約書を取りつける。そのほか、従業員教育を行

    い、それぞれの責務を明確にすることです。」

社長乙:「営業秘密とすべき情報自体は、どのようなものでなければならないのです

    か。」

あなた:「( B )の要件があります。情報自体が、客観的に事業活動に利用されて

    いたり、利用されることによって、経費の節約、経営効率の改善等に役立つ

    ものでなければなりません。御社で開発したプログラムはもちろん、営業活

    動に資する顧客情報なども含まれることがあります。」

社長乙:「そういうものを、営業秘密として他の雑多な情報と区別して管理しなければ

    いけないということですね。」

あなた:「そのとおりです。最後に( C )という要件も満たしていなければなりま

    せん。これも、秘密というくらいですから一般に入手できない情報であるこ

    とが必要となります。当たり前といえば、当たり前ですね。」

社長乙:「いろいろ大変そうですけど、情報は我が社の生命線ですから、早速、取りか

    からないといけないですね。」

 

(設問1)

文中の下線部の法律においては、営業秘密の定義及びこれに関連して損害賠償請求や刑事罰などの規定がある。この法律の名称として最も適切なものはどれか。

 

ア 個人情報の保護に関する法律

イ 商法

ウ 不正アクセス行為の禁止等に関する法律

エ 不正競争防止法

 

 

(設問2)

文中の空欄A、B、Cのいずれにも、当てはまらないものはどれか

 

ア 認識可能性(情報が秘密であると認識できること)

イ 非公知性(公然と知られていないこと)

ウ 秘密管理性(秘密として管理されていること)

エ 有用性(有用な情報であること)

 

 

(設問3)

企業甲における営業秘密について、文中のB~Eに関連した説明として最も適切なものはどれか。

 

ア ( B ):企業甲が脱税をしている事実を記載している情報について、

       これを秘匿していることが企業甲の利益につながることから、企

       業甲の営業秘密として( B )の要件を満たすことができる。

イ ( C ):一般に公表されている取引先などの企業名やその住所について、

       これが当該企業のその他の情報と一体となって管理されている場

       合であっても、企業甲の営業秘密としては( C )の要件を満た

       すことが出来ない。

ウ ( D ):部長丙氏自らが職務上創作した情報について、これが社長乙氏の

       みがアクセスできるものとして( D )の要件を満たし、企業甲

       の営業秘密として管理されている場合でも、部長丙氏が第三者に

       開示することができる。

エ ( E ):デジタルデータは、パスワードを設定してこれを知る人を限定す

       るなど情報・人の管理の対象を明確化し、デジタルデータが保存

       されているデータベースを外部ネットワークから遮断すること等

       により、( E )の要件を満たすことができる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

長い・・・(笑)

平成19年度の問題ってどの科目も難しいような気がするんだけれど。

さて、事例の形式を採ってはいますが営業秘密の保護に関する基本的なことを問うています。

設問1は、営業秘密を定義し、罰則等を定める法律は不正競争防止法です。だから営業秘密に関する事柄を法律で定めているのが不正競争防止法と理解しておけば大丈夫ですね。ゆえに正解は、エ です。

次の設問2。

文中の空欄は営業秘密の3要件が当てはまりますね。で、設問要求は「当てはまらないもの」を選ぶという形式です。

それが営業秘密だとされるためには、①秘密管理性 ②有用性 ③非公知性 を満たさないとなりません。正解は、ア だとすぐに分かるのですが、問題文中のどこに何が入るのかを確認すべきでしょうね。

まず空欄Aには「秘密管理性」が入ります。これはすぐに選べるのではないでしょうか。社長乙の会話に「最初は( A )ですか。それは当然ではないですか。」とあり、マル秘マークとかハンコとか言っていました。さらに空欄Dと空欄Eの要件も必要だとしています。空欄Dには、「情報に接する人を制限」とありますのでアクセス制限に関する事柄が入りそうです。また、空欄Eについては、「文書情報に接した者にそれが秘密であると認識できるようになっている」とあります。だからその文書が秘密だと分かるようにする、みたいな意味合いのことが入るのだと判断しました。

次いで空欄Bには、「情報自体が、客観的に事業活動に利用されて」いて、「経費の節約、経営効率の改善等に役立つもの」だとしています。つまり役に立つものという意味合いで「有用性」が当てはまります。

最後の空欄Cには「非公知性」があてはまります。「秘密というくらいですから一般に入手できない」という記述で、秘密管理性と悩んでしまいます。

もし仮に空欄Aに「非公知性」が入るとしたら、その後の空欄DとかEが矛盾します。非公知性なのにアクセス制限の有無はダメですもんね。

最後の設問3です。

今一度空欄B~Eに当てはまる用語を確認しましょう。

B:有用性

C:非公知性

D:アクセス制限に関すること

E:その文書が秘密だと分かる、みたいなこと

これらをふまえて選択肢を検討しましょう。

アです。アには空欄Bについてですね。

「脱税」なんて言葉がありますから、ひょっとすると「非公知性」かなとか思ってしまいます。脱税の事実を記載した文書が営業秘密かってことですよね。脱税ですから違法行為ですし、こういった行為を営業秘密とするのは公共の福祉に反します。ですから不適。

イです。

一般に公表されている取引先の企業名や住所だけだったら営業秘密に該当しないかもしれません。ですが、当該企業のその他の情報と一体となって管理されていますから企業甲の営業秘密だということもできます。空欄Cは、問題文を読むと「非公知性」が入るのが分かりますから、当該企業のその他の情報が管理者以外知られていないようなものなら営業秘密に該当してきます。ゆえに、非公知性を満たすことが出来ないとする記述は誤りです。

ウです。

部長丙氏が創作したとはいえ、社長のみアクセスが許されていないような情報ですから、これはアクセス制限の有無があるものとしてみなされます。ですから部長丙氏が第三者に開示できるようなものではないと判断するのが妥当でしょう。ゆえに、本肢も不適です。なお、空欄Dには「アクセス制限の存在」が当てはまります。

エです。

肢には「パスワード」とか「限定」とかいう記述があり、空欄Eにはアクセス制限に関連することがらが入るのかなと思ってしまいます。アクセス制限があればそれが秘密文書であるという認識を持たせることが出来ます。この時点で空欄Eに何が入るか分かりませんが、本肢の記述は正しい記述だといえそうです。なお、空欄Eには「客観的認識可能性の存在」が入ります。こんなん、分かるかッ!

以上により、正解は、エ である。