経営法務【平成23年度 第11問】
【平成23年度 第11問】
平成21年8月1日、国際物品売買契約に関する国際連合条約(通称:ウィーン売買条約、CISG)が日本について発効した。この条約は、国際物品売買契約に関し、契約の成立及び当事者(売主・買主)の権利義務を規定するものであり、主に、異なる締約国に営業所を有する企業間の物品売買契約に適用されるとしている。
この条約と日本の民法・商法その他の契約に関する規定との共通点・相違点についての記述として、最も適切なものはどれか。
ア 隔地者間の契約について、日本の民法では、承諾の意思表示が発信された時
に契約が成立されているとするが、この条約では、承諾の意思表示が申込者
に到達した時に契約が成立するとされている。
イ この条約は、営業所が異なる国に所在する当事者(売主・買主)間の物品売
買契約において、この条約を適用する旨定めた場合にのみ適用されるのに対
して、日本の民法・商法は、日本に営業所が所在する当事者間の契約である
限り、常に適用される。
ウ 日本の民法・商法では、契約の解除が出来る場合が「重大な契約違反」があ
る場合に限られているが、この条約にはそのような制限はない。
エ 日本の民法では、申込みと承諾が完全に一致しなくても、その違いが実質的
なものでない場合には、契約が成立するとされているが、この条約では、申
込みと承諾が完全に一致しなければ契約は成立しないとされている。
ウィーン売買条約に関する出題です。ちょうど変化点があったもんですから時事的な出題として採用されたのでしょうね。
さて、日本の民法・商法との共通点や相違点も問うています。相違点を中心に押さえることで対処は可能でしょう。
では選択肢を検討していきます。
ア:契約に関する相違点は、まず、日本の民法では相手の承諾が到達した時に契約成立とする到達主義を採用しています。一方で、ウィーン売買条約は発信主義を採用している点です。このウィーン売買条約は1988年に発効していますが、こういった相違点があるため日本では発効がかなり遅くなったといわれています。ゆえに本肢は正しい記述です。
イ:国際条約とはいえ、当事者間の合意があれば準拠法をどちらにするのかを決められるはずです。だから、「のみ」とか「常に」とかいう記述は不適です。
ウ:日本の民法や商法では契約の解除は債務不履行全般で可能だとしているはずです。対するウィーン売買条約では「重大な契約違反」がある場合に制限しています。ですから本肢も不適。
エ:日本の民法では申込みと承諾が完全に一致しないと契約成立とはなりません。ですから不適だと分かります。ウィーン売買条約では完全に一致しなくても実質的に違いがなければ有効だとしています。
以上により、正解は、ア である。
日本の民法について理解があれば難なく解けたかもしれませんね。