自称週末ファーマーの国家試験受験記

自己啓発の延長なのか、自己実現の手段なのか、はたまた意地の張り合いか。生きているうちに“何か”を成し遂げたいから走り続けているような感じがする

経済学・経済政策【平成23年度 第22問】

【平成23年度 第22問】
 下図は、自然独占のケースを示したものである。D0D1は需要曲線、MRは限界収入曲線、ACは平均費用曲線、MCは限界費用曲線である。なお、平均可変費用曲線AVCは限界費用曲線と同一である。

f:id:sk6960:20160412135105j:plain

 この図の説明として最も適切なものの組み合わせを下記の解答群から選べ。

a 限界費用に等しい価格付けを行うためには、四角形OP2GQ2に相当する補助
 金や二部料金制の導入が必要である。
b 限界費用に等しい価格付けを行う場合、価格はP2、取引量はQ2で示され、
 企業の利潤は四角形P2GIJの赤字となり、これは固定費用に相当する。
c 独占下において、利潤を最大化にする価格はP0、取引量はQ0であり、全体
 の経済余剰は四角形P0EFP2になる。
d 平均費用に等しい価格付けを行う場合、価格はP1、取引量はQ1であり、企
 業の利潤はゼロになるから独立採算を実現する。


〔解答群〕
ア a と c   イ a と d   ウ b と c   エ b と d

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

自然独占のケースです。長期平均費用が生産量の増加とともに低下するような費用関数をもつ企業から構成される産業です。費用逓減産業ともいいますかね。電力やガス、水道などでこういった産業は半官営化みたいなもんです。

費用逓減産業について少し確認しましょう。
・長期平均費用は右下がり
・MC=MRで利潤最大化
・余剰の損失が発生する
限界費用価格形成原理では固定費用部分が赤字
・平均費用価格形成原理では生産量が過小で最適資源配分が実現されない
・二部料金制は安いところで料金設定、赤字分の固定費用は基本料金でカバー

限界費用をもとに価格を決めようという考えが限界費用価格形成原理です。
MCと需要曲線との交点で価格を決めようというしくみです。
実はこのMCは供給曲線みたいなものですから、MC(=供給曲線)と需要曲線との交点で価格を決めるというのは実に合理的です。
しかしながら、AC>MCになってしまうので固定費用部分が赤字となり、赤字分の補填が必要となります。
価格が安いので消費者にとってはよかったのですが、自然独占の企業が倒産してしまうと大変なのでつぶすわけには行きません。

逆に、平均費用をもとに価格を決めようというのが平均費用価格形成原理です。
平均費用曲線と需要曲線との交点で価格を決めようというしくみです。
よく見るとMCと需要曲線との交点が最適な生産量のはずですが、
平均費用と需要曲線との交点では、最適な生産量よりも生産量が減ってしまいます。生産量が過少となるため余剰が減少し、死荷重が発生します。最適資源配分が実現されないということです。
ですが、価格=平均費用となるため、赤字が発生せず独立採算が可能になります。
消費者にとっては生産量が過小になるのであまり好ましいものではありませんが、企業にとってみれば独立採算が可能で赤字の補填の必要がなくなります。

これらのよいとこ取りが二部料金制です。
消費量とは無関係に一定の基本料金を徴収する一方で消費量に応じて従量料金を徴収するしくみが二部料金制です。
消費者にウレシイ限界費用価格形成原理で価格設定し、生産量も限界費用価格形成原理での生産量に設定します。
価格が低いところ、生産量は多いところで設定しますから企業側にしてみれば赤字が発生します。その赤字分すなわち固定費用部分を基本料金として徴収することで赤字分を補填し、独立採算を可能にするしくみです。

本問の図でいえば、
限界費用価格形成原理の場合、
・価格 → P2
・生産量 → Q2
・赤字部分 → 四角形P2JIG  になりますし、
平均費用価格形成原理の場合、
・価格 → P1
・生産量 → Q1
・死荷重 → △EFG
二部料金制を導入した場合、
・価格 → P2
・生産量 → Q2
・基本料金を課す固定費用部分 → □JIGP2
となりますね。

また、独占企業に競争がないことにより企業努力を怠るようになり、非効率が発生することを「X非効率」といいます。

ですからこういった費用逓減産業に対して公共料金設定に対する規制をかけています。
①総括原価方式 → 適正な原価に適正な利益を加える方法
プライスキャップ方式 → 料金の上昇率に上限を設定する方法
ヤードスティック方式 → 同種の企業を参考にする方法

以上をふまえて選択肢を検討します。
Aa:限界費用に等しい価格付けのときの価格はP2です。そもそもAC>MCですからACとMCの差が赤字となります。つまり、赤字補填すべき部分は□JIGP2です。よって不適です。
Bb:限界費用をもとに価格設定を行う場合の生産量は、MCと需要曲線Dの交点を見ればいいですから、生産量はQ2、価格はP2です。赤字部分は固定費用部分ですから本肢の記述は正しいです。
cc:独占下において、利潤を最大にする条件はMC=MRです。つまり、MC=MRのときの生産量Q0、価格P0のときです。全体の経済余剰は、死荷重が発生するものの、□D0EFP2です。ゆえに不適。
dd:平均費用をもとに価格設定する場合、ACと需要曲線Dの交点を見ればOKです。価格はP1、生産量はQ1です。AC=Pですので赤字は発生しません。ゆえに独立採算が可能です。
以上により、正解は、エ である。