経営法務【平成19年度 第10問】
【平成19年度 第10問】
外国法人のA社がもつ、指定商品が「X」で「○○○」というローマ字の大文字で書した先願既登録商標に対し、B社は同じく指定商品「X」とし、「○○○CLUB」という字句を同書、同大、同間隔、かつ一連に書して商標登録出願したところ、商標権を取得できた。
その後、A社は自社の登録商標「○○○」を付した商品の大々的な広告宣伝活動を開始した。
その結果、A社の登録商標は、B社の商標が登録された後ではあったが、A社の商品を表示するものとして日本国内において広く人に知られる存在となった。その後、B社は自社の登録商標「○○○CLUB」のうち、「○○○」と「CLUB」の間を1文字離して使用したところ、A社から警告書が送られてきた。
この場合のB社の対応について、最も不適切なものはどれか。
ア 1文字も離すと、「○○○」と「CLUB」との間に、それぞれ別の意味が生じ
てくる可能性があることから、B社の登録商標「○○○CLUB」の使用とは言
えない場合が生じてくるので使用を中止する。
イ 「○○○」と「CLUB」の間を1文字離して使用する場合、B社の方に信用の
ただ乗り(Free ride)意思があるとして、B社の登録商標は不正使用取消審
判の対象となりうるので対策を考える。
ウ 商標「○○○」と「CLUB」の間を1文字離した程度では、商標「○○○」と
「CLUB」の間の一体性は損なわれていないので、B社の登録商標
「○○○CLUB」の使用であるとして使用を中止しない。
エ たとえ1文字離した程度であったとしても、A社の登録商標「○○○」が既に
周知著名商標となっていることを考慮すると、A社の商品との間に出所の混同
を生ずるとされる恐れがあるので、使用を中止する。
ずいぶんとまぁ実務的な出題ですこと。おほほほ。
与件を確認すると、
A社:外国法人 「○○○」で商標権取得
B社:A社より後に「○○○CLUB」で商標権取得
A社:「○○○」を大々的に宣伝公告。日本国内で周知著名に
B社:「○○○」と「CLUB」を1文字離したらA社から警告を受けた
ということです。
何がポイントなんだろう? 何が論点なのかな?
商標は類似する範囲内で他人に使用を禁止させる権利があったっけ。確か禁止権だったかな。それが論点? うそ?
とにかく選択肢を見てみよう。
アは、「○○○CLUB」を「○○○ CLUB」にしたら、「○○○」と紛らわしいよねぇ。だから記述は間違っているようには思えないな。
イは、「○○○」は周知著名になっているから、あえて1文字分離すと「○○○」に便乗していると疑われそうだな。
あ、そうかぁ。不正使用取消審判かぁ。これって利害関係人だけじゃなくて、誰でも請求できるんだもんね。ここが論点になっていたらマズいことになったな。あぶない、あぶない。
ウは、結論を言えば、「大丈夫じゃね?」というすごくポジティブな肢です。
エは、アとイ同様に使用中止の方向ですね。「○○○」がすでに周知著名ですから商標の機能である出所表示機能を害することになりかねない。それに商標の登録要件は、自他商品役務識別力があるかどうかがポイントだから、エも正しい記述だと思われる。
したがって、選択肢の中で唯一ポジティブな(笑)ウ が正解。