自称週末ファーマーの国家試験受験記

自己啓発の延長なのか、自己実現の手段なのか、はたまた意地の張り合いか。生きているうちに“何か”を成し遂げたいから走り続けているような感じがする

第104話 経営法務33 不正競争防止法

法務のヤマ、会社法産業財産権が終わった。もう少しで法務のレビューが終わる。
今回は不正競争防止法について。
不正競争防止法の目的は、「事業者間の公正な競争およびこれに関する国際約束の的確な実施を確保するため、不正競争の防止および不正競争に係る損害賠償に関する措置等を講じ、もって国民経済の健全な発展に寄与すること」である。
つまり、事業者間の公正な競争を確保するために、また、消費者を困惑させないため、不正競争行為に対する民事上の救済手段と刑事上の罰則を定めるということである。
なお、“国際約束”とは、①パリ条約、②マドリッド協定、③TRIPs協定、④国際商取引における外国公務員に対する贈賄の防止に関する条約(OECD外国公務員贈賄防止条約)などが該当する。

1.商品等表示
 不正競争防止法における商品等表示とは、次のとおりである。
1)氏名(人の業務に係るもの、以下同じ)
2)商号
3)商標
4)標章
5)商品の容器もしくは包装
6)その他の商品または営業を表示するもの

 ●商品等表示 → 不正競争防止法の文言

2.不正競争行為の類型
 不正競争防止法では、以下の9つを不正競争と定めている。
周知表示混同惹起行為
 他人の商品等表示として需要者の間に広く認識(=周知)されているものと同一・類似の商品等表示を使用し、または使用した商品を譲渡等し、もしくは電気通信回線を通じて提供して、他人の商品・営業と混同を生じさせる行為
実際に混同が生じる必要はなく、混同のおそれが生じれば足りると解釈されている。また「周知」とは一地方的なものでかまわないが、同一もしくは類似する表示を使用する者の営業地域を含まなければならない。
<例> 俳優の高知東急(今は『高知東生』と改名)の「東急」は、周知表示である「東急グループ」の「東急」と混同するおそれがあるとされた(高知東急事件、東京地裁判決)

著名表示冒用行為
 他人の著名な商品等表示と同一・類似の商品等表示を、自己の商品等表示として使用し、またはその商品等表示を使用した商品を譲渡等し、もしくは電気通信回線を通じて提供する行為のこと。
この行為は、①の周知表示混同惹起行為とは異なり、「混同」を要件としていない。著名表示は周知表示よりも強力な表示力を持つ。「周知」は一地方的でOKだったが、「著名」は全国的に知られていることとしている。だから、たとえ、需要者が混同しなくてもこれを第三者が利用して顧客吸引力にただ乗り(フリーライド)、著名表示の表示力を希釈(ダイリューション)、良質なイメージを汚染(ポリューション)することを規制するものだ。なお、この3つの要件をすべて満たす必要はなく、1つでも満たせば著名表示冒用行為となる。現実には、フリーライドがまず発生し、ダイリューションやポリューションが同時に発生することが多い。

 1)フリーライド(ただ乗り)
 著名表示は、顧客吸引力・財産的価値をもっているので、著名表示を冒用する行為は、著名表示の顧客吸引力や財産的価値にただ乗りするものであるということ。
 2)ダイリューション(希釈化)
 希少価値をもつ著名表示と、その著名表示の使用者との結びつきが、冒用行為によって薄められること。
 3)ポリューション(汚染)
 高級イメージの商品表示を、高級とはいえないような店舗名などに冒用することで、その著名表示のイメージが汚染されるといった不利益が生じること。

商品形態模倣行為(デッドコピー)
 他人の商品の形態(当該商品の機能を確保するために不可欠な形態を除く)を模倣した商品を譲渡等する行為
なお、日本国内で最初に販売された日から3年を経過した商品の形態模倣および模倣商品の善意かつ無重過失取得者は不正競争とならない。「模倣する」とは、他人の商品の形態に依拠して、実質的に同一の形態の商品を作り出すことをいう。ゆえに、独自に創作した場合は、たとえ実質的に同一であっても、他人の商品の形態に依拠していないため、「模倣」には該当しない。不正競争防止法は「模倣」そのものを規制しておらず、模倣品を譲渡等する行為を規制している。

 ●商品形態模倣惹起行為 → 日本国内で最初に販売された日から3年までを保護

営業秘密に係る不正行為
 窃取、詐欺、強迫等の不正な手段によって営業秘密を取得し、自ら使用し、もしくは第三者に開示する行為、営業秘密を正当に取得した場合であって、図利加害目的で使用・会おじする行為などのこと。“図利加害目的”とは、不正の利益を得る目的、他人に損害を与える目的のこと。
 営業秘密として保護を受けるためには、秘密管理性、有用性、非公知性という3つの要件をすべて満たさなければならない
1)秘密管理性
 鍵・パスワードなどによりアクセスできる者を制限すること(アクセス制限の存在)や、秘密情報である旨の表示(「マル秘」印など)をすることにより、客観的に秘密として管理されていると認められる状態にあることが必要である。
2)有用性
 当該情報自身が客観的に事業活動に利用されることによって、経費の削減や経営効率の改善などに役立つものであることをいう。現実に利用されているかどうかは問わない。
3)非公知性
 保有者の管理下以外では、一般的に入手出来ない状態にあること。つまり公然と知られていないことである。
これら3つを全て満たすことが条件となり、どれか一つでも欠けると、それは営業秘密にはならない。

 ●営業秘密 → 秘密管理性・有用性・非公知性をすべて満たす必要がある

デジタルコンテンツの技術的制限手段に対する不正行為
 デジタルコンテンツの複製防止のために提供事業者が施した技術的制限を破る手段を提供する行為をいう。なお、個人ユーザーが技術的制限手段を無効化する行為そのものは規制の対象にならない。

ドメイン名に係る不正行為
 図利加害目的で、他人の商品等表示と同一・類似のドメイン名を使用する権利を取得・保有またはそのドメイン名を使用する行為のこと。そのドメイン名は周知・著名であることを必要としない。つまり周知・著名は要件ではない。

誤認惹起行為
 商品・役務もしくはその広告・取引に用いる書類・通信ん、その商品の原産地、品質、内容、製造方法、用途・数量もしくはその役務の質、内容、用途・数量について誤認させるような表示をし、またはその表示をした商品を譲渡等し、もしくは電気通信回線を通じて提供する行為、もしくはその表示をして役務を提供する行為。
 カンタンにいうと、市場において消費者が適正な購入判断を誤るような行為のことをいう。

信用毀損行為
 競争関係にある他人の営業上の信用を害する虚偽の事実を告知し、または流布する行為のこと。競争関係にある他社について、「あそこんちは倒産しそうだ」などとデマを流す行為などが該当する。

代理人等の商標冒用行為
 商標の国際的保護の観点から、輸入代理人などによる不正な商標の使用などの行為。

3.不正競争に対する手段
 不正競争防止法には、民事上の手段と刑事上の手段が定められている。
①民事上の手段
 差止請求、損害賠償請求、信用回復措置請求が可能。過失の推定規定はない

②刑事上の手段
 一定の場合、以下の不正競争には刑事罰が科せられる。
 周知表示混同惹起行為、著名表示冒用行為、商品形態模倣行為、営業秘密に係る不正行為、誤認惹起行為、デジタルコンテンツの技術的制限手段に対する不正行為。

ここまでが不正競争防止法について。
あと1回で知的財産権関連が終わります。
法務そのものはもう少し続きますが、先が見えてきましたよ。

続く。