平成26年度 事例Ⅳ 第2問
事例Ⅳも読解力を試される。なんといじわるな。
例えば、平成26年度の事例Ⅳ。
第2問(配点30点)
D社のある店舗の平成26年度における予想損益計算書は以下のとおりである。売上原価は売上高に比例している。設備備品の償却は定額法(取得原価1,000万円、残存価額ゼロ、耐用年数5年)で行われており、平成27年度期末で償却が終了し、改装のため取り替える予定である。しかし、この店舗の最寄駅では、平成27年4月1日の完成に向けて再開発が進んでおり、これに合わせて改装を早める提案がある。
改装する場合、再開発イメージに合わせた改装やインターネット環境などの充実のため、1,500万円の設備投資額が見込まれている。設備投資は期間5年の定額法(残存価額ゼロ)で償却される予定である。改装した場合は、販売費・一般管理費のうちその他経費が、平成26年度よりも10%増加すると見込まれている。
平成26年度期末に改装した場合、駅前の再開発との相乗効果により今後5年間の売上は平成26年度よりも10%増加すると見込まれている。一方、改装を平成27年度期末に行う場合、相乗効果が得られないため、平成27年度の売上は平成26年度より5%増加し、平成28年度以降の4年間は平成26年度より10%の増加が見込まれている。
なお、再開発に合わせた改装を行う場合、現在の設備備品は平成26年度期末の帳簿価額で翌年度期首に除却されるものとする。
下記の設問に答えよ。
(設問1)
平成26年度期末に改装した場合(a)と、平成27年度期末に改装した場合(b)について、それぞれの平成27年度の予想税引後キャッシュフローを求めよ。ただし、運転資本の増減はなく、法人税率は40%とする。
(設問2)
平成27年度から平成31年度までの5年間における予想税引後キャッシュフローの正味現在価値を計算し、駅前の再開発完成に合わせて平成26年度期末に改装するか、予定どおり平成27年度期末の償却が終わるのを待ち平成27年度期末に改装するかを判断せよ。 ただし、運転資本の増減はなく、法人税率は40%、資本コストは5%とする(計算には以下に示す現価係数を用いよ)。
長いな。しかも解釈が複数あるし。
(設問1)は27年度の予想税引後キャッシュフローを求める問題。26年度期末に改装した場合、新設備の減価償却費が必要で旧設備は除却損。しかも除却損は費用の流出はないから正味キャッシュフローに加える必要がある。27年度期末に改装した場合の27年度税引後キャッシュフローは、新設備の減価償却費は次年度だしその他経費の増加分も発生は28年度分から。また新設備の償却は平成32年度もあるから、残存価値を正味キャッシュフローに加えるか加えないかで解答が変わる。どっちが解答なのかは分からない。条件が書いていないからね。
もっとも100点を取らせないための問題だろうし、この設問で落としても60はイケる程度に仕上げればよいのだけれどね。
ちなみに、(設問1)はこう解いた。
条件を整理すると、
①売上原価は売上高に比例する
②設備備品の減価償却は定額法、取得原価1,000万円、残存価額ゼロ、耐用年数5年。
平成27年度期末で償却が終了
③1,500万円の設備投資。定額法、耐用年数5年
1,500万円÷5年=300万円 が減価償却費
④その他経費は26年度よりも10%増加。その他経費650万円×1.1=715万円
⑤26年度期末に改装。今後5年間(27、28、29、30、31)売上高は10%増加。
4,200万円×1.1=4,620万円
⑥27年度期末に改装。27年度は売上高5%増加。28、29、30、31は10%増加。
27年度は4,200万円×1.05=4,410万円
28年度以降は4,200万円×1.1=4,620万円
⑦再開発に合わせた改装を行う場合、現在の設備備品は26年度期末の帳簿価額で27年度期首に除却。除却損は営業外費用。
求めるのは26年度期末改装と27年度期末改装それぞれの税引後キャッシュフローだから、税引後営業利益NOPAT+減価償却費DEP を求めてやればよい。
ただし、除却損(特別損失)が資金支出を伴わない費用なのでCF計算する際にNOPATに加えてやることに注意。
※27年度期末に改装する場合の税引後キャッシュフローの計算は27年度のP/Lを利用するので、改装によって生じる費用はまだ発生しない。
以上のことから、表にまとめると以下の通り。単位は千円。
1)27年度期末改装の場合、その他経費10%増は27年度P/Lには反映されず。「6,500」のまま
2)26年度期末改装の場合、当該DEPは27年度P/Lに反映されるから「3,000」。
3)「再開発に合わせた改装」とは平成26年度期末での改装のこと
4)26年度期末改装の場合、旧設備の1年分「2,000」を除却。ゆえに新規設備のDEP「3,000」のみ発生
5)一時的に発生する除却は「特別損失」に計上。経常的に発生する除却は営業外費用に計上する場合もある
求める税引後CFは、税引後利益+DEP(+除却損)だから、
26年度期末改装の場合→税引後利益0+減価償却費3,000+除却損2,000=5,000
27年度期末改装の場合→税引後利益1,245+減価償却費2,000=3,245
となる。
※ひょっとしたらこの除却損も考慮しないでも点数が入っているかもしれない(予想)。
(設問2)
NPVの計算。(設問1)で税引後CFを求めているので、以降の税引後CFを算出し、慎重かつ単純にNPVの計算をするだけでよい。
※当問は旧設備の売却収入はないのでCFに加算することはない。
①26年度期末改装
27~31年度までの営業CFを求める。27年度は算出済みで営業CF=5,000。
27年度と28年度以降で異なるところは、1)除却損がなくなること 2)税負担が発生すること の2点。ゆえに表にまとめると以下のとおり。単位は千円。
与件より、複利現価係数が与えられているから、
NPV=(5,000×0.95)+(4,200×0.91)+(4,200×0.86)
+(4,200×0.82)+(4,200×0.78)-15,000=18,904-15,000=3,904 ・・・①
②27年度期末改装
同様に表にまとめてみた。
当設問の解答が割れる理由は、27年度期末に改装した場合、31年度の当該設備の帳簿価額が3,000千円あり、この残存価額の扱いをどうするかによってNPVが変わるから。イケカコ的には正味CFに加えるとある。
つまり、27年度期末に改装するということは当該設備の減価償却が始まるのは28年度のP/Lからであり、31年度期末には帳簿価額3,000(取得15,000-減価償却累計12,000)であり、この3,000の扱いが設問文の中に指定がないことから正解が分かれると考えられる。
当該設備を売却すれば売却収入となるから、これは財務CFとなり、営業CFに加えてやる必要が出る。つまり、31年度の正味CF=営業CF4,200+財務CF3,000=7,200となる。
また、27年度期末に改装するということは27年度期末に設備投資することになり、(今は26年度なので)その設備投資額を現在価値に割り引く必要あり。
したがって、当設問が求める正味CFは、正味CF=営業CF+投資CF+財務CFで求める必要があるということ。
したがって、
NPV=(-11,755×0.95)+(4,200×0.91)+(4,200×0.86)
+(4,200×0.82)+(7,200×0.78)
=-11,167.25+3,822+3,612+3,444+5,616
=5,326.75 ・・・②
ところが、31年度に売却収入はないものとすると、
NPV=(-11,755×0.95)+(4,200×0.91)+(4,200×0.86)
+(4,200×0.82)+(4,200×0.78)
=-11,167.25+3,822+3,612+3,444+3,276
=2,986.75 ・・・③
また、初期投資の15,000を現在価値に割り引かないと、
NPV=(3,245×0.95)+(4,200×0.91)+(4,200×0.86)
+(4,200×0.82)+(4,200×0.78)-15,000
=3,082.75+3,822+3,612+3,444+3,276
=17,236.75-15,000=2,236.75 ・・・④
ゆえに、<解>は、
①<② だから 27年度期末に改装すべきである。
①>③ だから 26年度期末に改装すべきである。
①>④ だから 26年度期末に改装すべきである。
著者はこのように解いてみた。